ある夏、20:00

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ある夏、20:00

「てなことがあってさ」 「ええーすごいじゃん紗希」  夜、カレーを食べながら同じ化学科の友達――美香(みか)に今日あった出来事を話した。  二人で夕飯をすませて、レポートを開始したけれど、難しすぎてなかなか進まない。休憩がてらカフェオレを淹れようと立ち上がれば、美香は「はー」と伸びをしてごろりとクッションに抱き着いた。そうして、乾かす為に広げてあった傘をちらりと見る。 「これがイケメンから借りた傘かー綺麗な色」 「壊さないでよ」 「カレーのお礼にたたんであげる」  そう言って美香は傘を持ちあげた。ふと妙な顔になったので「どしたの」と尋ねてみれば首を傾げながら「何かこの傘柄が太いし折り畳みにしては重いね?」なんて言いながら几帳面に畳んでくれた。 「どこ置く?」 「あ、そのテーブルの上置いといて」 「んー」 「今週の実験のレポート課題やばくない?」 「やばい。難しすぎる、てかこれさ教科書必要じゃない?」  傘をテーブルの上に置いて、美香は「教科書とってくる」と立ち上がった。
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