秋の始まりごろ、15:17

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秋の始まりごろ、15:17

 と思っていたのに。  数週間後、美香からありえない話を聞かされた。 「は?」 「え、だから、彼氏できたって」 「……ちょ、ちょっと待って、は? 何? こないだ彼氏なんて出来る訳ないって笑ってた美香はどこ行ったの」 「どこも行ってないここにいる」  じっと私を見る美香は、うん、いつもの美香だ。だけれども。 「いやいやいやいや、何でそんなすぐ彼氏できんの? 詐欺にあってない?」 「ひっど、ちゃんと働いてる人だし、身元も知れてるから」 「……なら、いいけど」  でも、今の口ぶりだと相手は社会人だ。どうやって出逢ったのだろう。疑問が顔に出ていたのか、美香は小さく笑って私に言う。 「その人うちの大学に弟がいるんだって。化粧品メーカーの研究系統で働いてるらしくて、ほら、私、化粧品関係の仕事したいって常日頃から言ってるじゃん? 6月頃に一回説明会みたいなのに参加したんだよね。履歴書の名前とSNSの名前が一致して声かけてくれてさ。何度かご飯いったりしてるうちに、って感じ」 「……へぇ」  SNSってそういうこともできるんだ。 「私には分からない世界だわ」 「紗希ってそういうとこめっちゃアナログだよね。簡単だから始めればいいのに」 「いやー、私別に周りのものだけで満足してるし、幸せだからさ」 「ふーん、そんなもん?」 「……美香もいるし?」 「何、可愛いこと言うじゃん。だいじょーぶ、彼氏できても紗希からは離れないよ♡」 「ほんとかなー」 「疑うなんてヒドイ!」  とりあえず美香が騙されてないってわかってよかった、……その時は、そう思ったのだけれど。
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