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じゃぁ何が? と首を傾げていると再び優しい瞳で笑われた。
「今日、野々宮さんに話しかけられて良かった」
遠くからバスのエンジン音がする。先輩はバスを確かめると自転車に跨がった。
「IDは消さないから。これからもヨロシク」
「えっ?」
バスが到着しドアが開く。
「てるぞうサンの所で、また明日」
シャツを羽織り直すと満面の笑顔で手を振って自転車が走り出す。
トクトクと逸る鼓動がその背中を追いかけた。
――また明日
今日、今、この時だけで終わると思っていた。けれどキセキが続く。
バスに乗り込み夢心地で空を見上げると大きな虹が出ていた。
(先輩も見てるかな)
そう思った瞬間、手の中でスマホが震えた。メッセアプリの小さなアイコンが着信を知らさせている。
慌てて開くと先輩からで。
「わっ」
そこには先輩の手が作るピースサインの向こう側に、わたしが見ているのと同じ。綺麗で大きな輝く虹。
――――そして。
『オレにとっても今日はキセキ』
夕立に王子様と閉じ込められたら、雨が上がると同時に新しい世界が待っていた。
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