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って言っても、どこから話そうかなぁ。つい先月くらいの話なんだけど、最初は他愛のない会話だったんだよね。私と同じ講義を取っている友人、ここでは仮に「A子」って呼んでおこう。昼休みに大学の食堂で一緒にお喋りしていたんだ。
「ねぇ、夕立って、何で『夕立』って言うのかな?」
A子はスマホを眺めながら、唐突にそう言った。いきなりの質問に私は戸惑ったよ。
「何、急に?」
「いや、これを見たからさ。急に気になって……」
A子は私にスマホの画面を見せてくる。その画面には「午後から急な雨が降ります。ご注意ください」という天気予報が映し出されていた。
「夕立って言葉はこの記事の中には見当たらないけど……」
私が聞くと、彼女は
「確かに、この記事にはその言葉自体は無いんだけどね。ほら、『夕立』って言葉はよく聞くじゃん。夏の午後とか夕方とかに急に降ってくる雨を夕立っていうのは知ってるけど、『夕に立つ』って意味が分からなくてさ。『夕雨』とか『夏雨』とかの方が分かりやすいじゃんって、記事を見てたら思っちゃってね」
って頭を掻きながら答えた。
成る程って思った。私達がいつも何となく使っている言葉。でも、その言葉の成り立ちや漢字をじっくりと見ていくと、偶に不思議に思うことがある。「何で、この言葉はこういう漢字なんだろう?」とか「この言葉って、何でこういう言葉なんだろう?」ってね。「面倒」とか「台風」って漢字。あれも小学校の頃に気になって調べてみたら当て字だと分かって、心底驚いた経験がある。
「夕に立つ」。いや、「夕方に立つ」だろうか。何で「夕立」は「夕立」なんだろう? 言われてみれば、凄く気になる問題だった。まぁ、当て字だっていう可能性も否定できないけど。
私もスマホを取り出して調べてみた。学校に提出するレポートではないので、心置きなくウィキペディアで調べられる。(レポートでウィキを参考文献にすると減点される)。すると、こう書かれていた。
「古語としては、雨に限らず、風・波・雲などが夕方に起こり立つことを動詞で『夕立つ(ゆふだつ)』と呼んだ。(中略)ただし一説に、天から降りることを『タツ』といい、雷神が斎場(祭祀や儀式が行われる場所のこと)に降臨することを夕立と呼ぶとする」
他のサイトでは
「強い日差しで発生した雲が空に『立つ』ような積乱雲に発達し、上空を通過する際に降るから」
「『夕』は『夕方の様になる』という意味であり、『夕立』とは『まだ明るい時間帯にもかかわらず、突然、雨雲が湧き、夕方を思わせる程に薄暗くなる』こと」
「『ゆうだち』は元々は『いやふりたつ(彌降りたつ)』という言葉であり、『彌』は『ますます、きわめて』という意味らしく、『きわめて激しく降り出した雨』という意味の『いやふりたつ』が『やふたつ』➝『ゆふたつ』➝『ゆふだち』へと変化した」
などの説が書かれていて、諸説入り乱れていた。
それをA子に教えると、
「う~ん、結局、正確な理由は分からないのかぁ。モヤモヤするなぁ」
とA子は溜息を吐いた。
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