夕立は何故、「夕立」か?

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3  私は昼食の後、一人でそのまま駅へと向かった。A子はこの後も講義があるらしい。私は午後の講義は無いから、昼休み以降は空いている。毎週、この時間帯は阪急電鉄に乗って梅田まで行き、のんびり寄り道をしてから自宅へ帰るというのが日課になっていた。  大学前の駅に着き、ホームの椅子に座る。丁度、昼休みが終わり、三限の講義が始まる時間だったので、駅のホームに殆ど人は居なかった。 「あれ?」  思わず声が出た。ふと、目の前を見知った顔の人物が通り過ぎたように見えたからだ。それは私やA子と一回生の頃から付き合いがある友達だった。安直だけど、名前をB子にしておくね。 「B子……?」  声を掛けようとしたけど、私の気のせいだったのか、ホームの何処にもB子の姿は見えなかった。  一回生の頃からの付き合いって言ったけど、二回生の頃からB子は大学に来る頻度が減ってきた。三回生の頃なんかは月に一度、見かけるか見かけないかだったし、四回生になった今年も一切、顔を見かけなかった。私とA子はB子が大学に来なくなった理由を知らない。二回生の頃は二人でLINEで声を掛けていたが、段々と就活などが忙しくなり、三回生の頃にはB子の存在を忘れることが多かった。  だから、久しぶりに彼女の顔を見て、驚いた。いや、この時点では本当にB子なのかどうかは分からなかったんだけどね。もし、本当にB子だったら、病気だとか事件に巻き込まれた訳じゃなくて良かったって思ったんだ。大学前の駅に居るってことは、大学には来ているってことだからね。私達と距離を置いた理由は分からないけど、元気そうで良かったって思ったんだ。。  結局、その場ではB子を見つけることは出来ず、阪急の赤茶色の電車が来てしまった。B子のことを脳裏に過ぎらせながら、私は車両に乗り込んで梅田まで向かった。
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