夕立は何故、「夕立」か?

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4  阪急の大阪梅田の駅に到着し、私は電車から降りた。車内も空いていて、降りたのは数十人程度だったけど、その中にB子の姿は無かった。この駅が終点なので、車両にはもう誰も残っていない。別にずっとB子を探していた訳じゃないから、何処か別の駅で降りたのだろうと思った。でも、一回生の頃は私とA子とB子の三人共が大学から大阪梅田までは帰路が同じで、そこから各々が違う路線で帰っていたから、少し不思議に思ったけどね。淡路とか十三で寄り道することも考えられたから、あまり深くは考えなかった。  階段を降りて、改札を通り、紀伊国屋書店に向かう。200インチくらいの大型テレビがある「梅田BIGMAN」は待ち合わせ場所の定番スポットになっている。そのすぐ隣に紀伊国屋書店の梅田本店がある。え? そんな事、説明しなくても分かるって? 念のためだよ。大阪に不慣れな人も居るかもしれないし。とにかく、そこの本屋で立ち読みをするのが私の日課だったんだ。  本屋の入口に立ち、中に入ろうとした時、ふと背後に何かを感じて振り返った。誰かが私の後ろを通り過ぎたような気がした。そして、その人は何処か懐かしい雰囲気を漂わせていたような……そんな気がした。  慌てて周囲を見渡す。そして、その人物の正体が分かったんだ。私の高校二年の時のクラスメイト、C男って呼んでおこう。彼がスタスタと歩きながら、駅の出口へ向かって歩いている様子を目にした。正直、驚かされた。彼は高校二年の二学期に学校へ来なくなってしまった。特にいじめがあった訳ではない。それは保障するよ。でも、ウチの学校はいわゆる進学校で、若干、校内の空気はピリついていた。C男はメンタルが弱い所があったから、そんな空気が嫌になってしまったんだろうね。さらに夏休み明けだったからさ……。ほら、夏休み明けの流れで学校に行かなくなっちゃう人って他の学校にも居るんじゃないかな? そんな要因が重なって、C男は学校に来なくなってしまった。三年生の時も卒業式の日にも一切、来なかった。そんな彼が外を出歩いているのを見たから、本当に驚かされたんだ。  思えば、今日は懐かしい知り合いによく合う日だなぁって思ったんだよね。折角の機会だし、彼に声を掛けようかなって考えた。で、彼の後を追って、駅の外に出た。目の前には梅田OPAの建物がある。走って追いかけたのだから、まだC男は近くに居る筈だって思い、辺りを見回した。でも、さっきのB子の時みたいに彼の姿は一瞬にして消えていた。私は狐につままれたように呆然として、その場に立ち尽くしていた。  その時、不意に後ろから声を掛けられた。
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