夕立は何故、「夕立」か?

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7  とまぁ、こういうお話でね。嘘みたいだけど本当の話だよ。で、このお話のオチだけど、皆さんの予想通り、この三人は既に亡くなっていた。皆、自殺だって聞いたよ。やはり、三人の心は完全に癒えてはいなかったんだろうね。 今でも悔やまれるよ。私に何か出来ることは無かったのかって。何で、彼等のことを忘れてしまったんだろうって。本当に後悔している……。    湿っぽい雰囲気になっちゃったね。ごめんごめん。で、元々の話は「何で夕立は『夕立』って言うのだろうか?」っていう話なんだけど。今回の件で私は一つの考えが浮かんだ。  彼等は幽霊だったんだよね。幽霊の「幽」は「かすか」とか「ほのか」、「うすぐらい」って意味がある。実際、扉をすり抜け、空を舞っていた彼等はそういう存在だった。そして、そんな彼等は。雷の道を、天に続く道を待っていたんだ。  つまり、「幽かな存在が空に立つ」。「幽立(ゆうだち)」。 ……とは考えられないかな?   この考えが正しければ、「幽立」とは死者を送る為の儀式とも言えるかもしれない。だから、皆、夕立の日は空には気を付けた方が良いよ。皆、傘を差してるから気付かないだろうけど、ふと、空を見上げたら浮遊している霊と目が合うかもしれないから。  さて、これで私、須勢理のお話は終了です。幽霊は出てきたけど、結局、これもそんなに怖い話じゃなかったね。伊佐里クンの宵山の話も聞いてさ。もしかしたら、幽霊って巷で語られている程、怖い存在じゃなくて、未練を残して死んでいった可哀想な存在なのかもね。  じゃ、蝋燭を消しますか。あ、これ、本物の火じゃなくて立体映像(ホログラフィ)なんだ。ちゃんと防火対策してるんだね。吹き消せば、ちゃんと火は消えるみたいだね。じゃあ、私の分の蝋燭を消して、次の人の話に移りましょう。  須勢理璃智流は蝋燭の火を吹き消した。 (完)
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