カーテン

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 看護師が再び俺に顔を向け、一言二言真顔で何かを伝えて部屋を出ていく。彼女の口の動きをまじまじと見つめても俺がその言葉を理解できるはずはない。せめて叱責や罵倒でなければいい、できることなら「おはようございます」や「いい天気ですね」「またあとできますね」などの優しい言葉であればいいと強く思う。  再び窓の外を見る。夏の朝、劇物かと思うほどに強烈な陽の光が自身の顔に降り注ぎ、目が潰れそうなほどの刺激を覚える。いつの日かこの両目すら使えなくなったとして、俺は深い暗闇の中、何一つ感じ取れないまま、それでもこうして生かされ続けるのだろうか。  不意に風が凪ぎ、動きを止めた木から勢いよくカラスが飛び立つ。ほんのわずか揺らいだ枝も、数秒後には何事もなかったかのように静まり、俺は刺すような光を遮るように一度だけ深く目蓋を閉じる。
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