カーテン

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 事故当日の記憶は途中までで途切れている。  大型トラックの運転手だった俺は、その日も明け方の高速道路をかっ飛ばしていた。俯いて目頭を抑えていた時間なんてほんの数秒だったと思う。しかし再び開いた瞳に飛び込んできたのはそびえ立つ防音壁で、それは眼前まで迫っていた。避けられない、と思ったその瞬間、俺の意識は暗転した。  次に目を開いたのが何ヵ月後だったのかはわからない。少なくとも俺が事故を起こしたのは十二月の中頃だったが、意識を取り戻した俺を見舞いにきた家族は薄手のTシャツしか着ていなかった。医者が俺の目に細く鋭いライトを当てる。それから小さく首を振ってみせると、母は両手で顔を覆い泣き出し、父は母の肩を抱きながら何度もさすった。
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