カーテン

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 現状に絶望するのもひと月ほどで厭きてしまった。どれほど自らの精神を追い詰めたとしても、どれほど自分の未来に希望を抱けなくとも、どれほど死にたくとも、自らの意思を提示できない俺の心情に気付ける人間など誰一人いない。  きっと皆は俺のことを窓の向こうの木々と同様に考えている。ただ生命を維持し、日々少しずつ老いていくだけの存在。それが彼らの思う俺の全てだ。俺がもう二度とカーテンを閉めないでくれと切望していることにも、あの窓向こうの移ろいだけを日々の癒しとしていることにも、たまに見舞いにくる家族の表情が少しずつ暗く陰鬱なそれに変質していく様を辛いと感じていることにも、頼むから今日が何月何日でいま何時何分なのかを教えてくれと願っていることにも、彼らが気付くことなどないだろう。
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