【ショート・ショート】雨上がりの夕空に

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「おい、気をつけろや」 千鳥足で俺にぶつかってきたというのに、まるで自分に非が無いようなオッサンの物の言い方。 それでなくても、この「最適な状態」にケチをつけられた、というのもあってか、俺はオッサンに向き直ると「お前からぶつかってきたんだろがぁ!」と、最大限の怒声を放った。 「あっ、あぁ……。 悪かったな、ちょっと酔っぱらいすぎたよ」 オッサンは頭にかぶっていた、今は亡き「近鉄バファローズ」の野球帽を脱ぐと、深く頭を下げた。 「いや、まぁいいけどよ……」 俺は溜飲を下げると、さっさとオッサンをやり過ごし、自らの死に場所を探す為に歩を進める。 「おいっ!」 が、オッサンは何故か歩を進める俺を呼び止めた。 「何だよっ!」 「お前、こんな夕飯時に何で公園とかうろついてんだぁ?」 「オッサンには関係ないだろがぁ!」 断ち切るように俺は言うと、踵を返し、再び歩を進めた。 「何か分かんねえけど、早く帰った方がいいぞ!」 オッサンは酔っぱらい特有の野太い声で、俺の背中に向かって言葉をぶつけてくる。 しかし、俺は振り返らずオッサンから逃げるように遊歩道を歩いていく。 「もうすぐ、夕立が降るからよぉ! 早く帰らねえと、ケツの毛までびしょびしょになっちまうぜ!」 続けてオッサンは言うと、高笑いを上げながら、遊歩道の奥へと消えていった。 ──夕立だと? オッサンの言った不可解な言葉に、俺は歩きながら眉根を寄せる。
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