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夕立の雨宿りのバス停、緑の黒髪の少女に出会った。それから何度か一緒の雨宿りが続き、ぽつぽつ話すうちに親しくなった。
――来年春には都会に出るんだ。
――そう。寂しくなるわね。
その年の夏、地域を豪雨水害が襲った。
しかし僕の家や学校を含め、村の被害はそう大きくはならなかった。
楡(にれ)の大木が倒れ、土石流が村に押し寄せるのを防ぐ形になったから。
しかしこの楡の木は長年地面にしっかり根を張っていて、本来この程度の水害で倒れるはずはなかったのだという。
あれ以来、あの娘の姿を見かけなくなった。
ずいぶん探してみたけれど、誰もそんな少女は見たことがないと言う。
結局僕は村に残り、木を植える仕事についた。
生きているうちに、いつかもう一度彼女に会えるだろうか?
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