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<11月15日>決心を裏切られる
☆七海☆千宙の誕生日の前々日の今日、私は彼とセックスをする決心をして寮を出た。今日は夜まで家に誰もいないので家に来ないか、と千宙から連絡があったからだ。期待と不安の入り混じった思いを抱えて向かったが、それはいとも簡単に裏切られてしまった。約束をすっぽかされた上に、彼が女の子を抱き寄せながらアパートの一室に入るのを見てしまった。私は一目散にその場から立ち去り、ぼんやりと電車に乗り、いつの間にか寮に帰っていた。
スマホを開くと千宙からの着信とメールが届いていて、何を今さらと思いながらもメールを開いて読んだ。そこには言い訳としか思えない事が書いてあり、返事もする気になれなかった。私たちの蜜月は、あっけなく幕を閉じた。☆☆☆
千宙はその日、バイトを終えて家に帰った所、警察から呼び出しがあった。七海との約束の時間が迫っていたが、大学も同じ秋庭二奈が男に襲われたという連絡だった。彼女は長崎から来ていて身寄りもなく、バイトの仲間であり親しくしている千宙を引受人として指名したのだった。千宙は七海との約束が気になったが、助けを求められて無視する訳にもいかず、二奈の方を優先した。七海には後で事情を話せば分かってもらえると、楽観視していた。しかし、七海の傷心は思っていたよりも深く、取り返しの付かない事態に陥ってしまった。
★千宙★七海には悪い事をしたと反省しているが、あんなにも怒るとは思わなかった。しかも理由を信じる気もなく、意地を張り続けていて収拾が付かない状態だ。電話やメールでは埒が明かないなら、一度会って話がしたいと思った。★★★
それから1週間、電話にもメールにも返事のない七海を案じて、千宙は以前立ち寄った女子寮の前で七海を待った。彼女が部屋にいるのか、それとも帰って来るのかの保証もなく待つ事にした。午後10時が門限だと知っていたので、それまで待ってみようと思っている所へ、七海が男に抱きかかえられて歩いて来るのを認めた。千宙はとっさに姿を隠して様子をうかがうと、彼女が男に腕を絡めて駄々をこねているように見えた。男は彼女の背中に手をやり、なだめているようにも見えた。その時千宙は、また裏切られたという思いで悄然とした。
★千宙★七海の事が、よく分からなくなった。俺と気まずくなったからといって、すぐに別の男に乗り換える七海が信じられなかった。初めては俺としたいと言って置きながら、その辺のビッチな女子大生と同じで処女が聞いてあきれる。そうならば、気を遣う事もなく、どんどんやっておけば良かった。もう、別れよう。★★★
千宙からの別れのメールを受け取り、七海はすぐに電話を掛けた。約束を放棄されたその日、千宙が女の子を抱きながらアパートに入って行くのを見たと告げた。千宙は誤解だと説明した後、七海が寮の前で男といちゃついていたのを見たと告げた。七海は自暴自棄になっていたと言い訳をした後で、待ち伏せをした事をストーカーだと責めた。話はかみ合わず、意思疎通ができないまま事態は悪化の一途をたどり、別れることになってしまった。
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