#03 父と母のこと

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#03 父と母のこと

 とにかく、いつも不機嫌で怒っていた母は、幼いころに自身の母を亡くし、祖母に育てられている。料亭の長女として生まれた母は、跡取り娘としてそれは大事に育てられたのだと、いつも自慢をしていた。  だが、母親というものを知らずに育ったからなのか、姉と私への愛情はごく薄いものだったように思う。私自身が母になって思うのだが、大切に育てられたせいなのか、いつも自分軸でものを考える人だった。典型的「お嬢様」タイプといってもいい。  一方、父も幼いころに自身の父を亡くし、父親というものを知らずに育った。七人兄弟の末っ子として生まれた父は、年の離れた姉たちが夜間学校に通いながら働いて、学費や生活費を賄われて育ったそうだ。  つまり、私たち姉妹は、父親を知らない父と母親を知らない母に育てられたということになる。姉から言われるまでは全く気が付かなかったけど、言われてみれば色々と合点がいくことが、成長するにつれて次々に起こることとなる。
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