#08 姉と妹

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#08 姉と妹

 この辺りで、ちょくちょく出てくる姉にも触れておきたいと思う。  姉は、少し歳が離れていることもあって、ずいぶんと私のことを可愛がってくれた。母が全く頼りにならないので、実家にいたころは、どちらかというと姉を頼りにしていたぐらいである。高校の修学旅行に行くときにも、お小遣いをくれたのは姉だったし、自分の事にしか興味がない母に代わり、時々女の子らしい服を買ってくれたりもしていた。  だけど、それとは別の感情があることも事実。よくある話で、第一子は目も手もお金も掛けてもらえるけれど、第二子以降はそうでもないっていうのが、我が家にもあった。  それこそ、姉は何かとお金をかけてもらっていたが、私は塾にもいかせてもらえなかったし、姉の進学先は常にお金がかかるところで、私は国公立がマスト、と言われてしまっていた。どうして、いつも私ばかり、と思っていた私だったが、姉も常にお金がないつらさを味わっていたらしい。高校では授業料関連で呼び出され、その後通っていた短大は、授業料が払えず結局卒業できなかった。  中退となった後に、地元の会社に勤めだした姉は、少ない給料ながら私に小遣いをくれるようになっていた。せめて少しでも不自由させまいとの気持ちだったんだろう。  浪人していた頃のとある日、姉と父が出掛けていき、泣きながら帰ってきたことがあった。父は、姉を借金の保証人にしようとしたのだが、姉は、断固として断った。父は、サインするだけなのに、といっていたが、後にその相手から姉に電話がかかってきて、そのうち借金の形として風俗に売り飛ばすつもりだった、といわれたそうだ。  しばらくしてからその事実を知ったとき、父を心から軽蔑した。こんなんじゃ、悪意ある人に騙されて当然だっただろうし、もはや父とも思いたくなかった。絶対に結婚なんかしたくない、と思った。今思えば、こんなろくでなしな男性ばかりじゃないのに、そう思い込んでいたんだと思う。追い詰められると、信じられるものは自分だけ、と思い込んでしまうのは、今でも変わっていないことの一つだ。
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