中宮さんたちが天才になれる方法

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「あっ…そう言えばごめんね。私ずっと小鳥遊くんの手を…。」 そう言うと中宮さんは強く握っていた手をパッと離した。 「や、全然まったく、何も問題無いよ。」 ここでありがとうと言うのも変だったし、照れくさかったのもあって僕は結局何だか分からない事を言ってしまった。 「そう言えば小鳥遊君はこんな時間に何かの用事だったの?部活は入って無いもんね?」 中宮さんは不思議そうに僕の方を見た。 彼女がそう思うのは当然だ。帰宅部の僕がこんな時間に教室に戻ってくるなんて普通はおかしいんだから。 「これ、取りに来たんだよね」 僕は椅子にかけてあったジャージのポケットから朝、篠嶋から貰った生ワッフルを取り出した。 「中宮さん沢山話してくれたからお腹すいたでしょ?良かったら食べない?半分で悪いけど。」 僕はキレイに個装されている生ワッフルの切り口を探した。 「美味しそう〜。小鳥遊くん甘い物好きなの?」 「うん。良く食べるかな。実はうちの祖母ちゃんがカフェをやっていてね。まあカフェって言っても小さいし、ちょっと変わった店なんだけど。そこの新商品の開発をちょっと手伝ったり提案するためにスイーツ食べたりしてるんだ。」 別にみんなに秘密にしていた訳では無いんだけど、高校生にもなると学校でわざわざ家の話をする事が無かったので、久しぶりに他人に話してちょっと照れくさかった。 「へぇ〜小鳥遊くんすごいね!じゃあ、それは小鳥遊くんがお祖母さんと食べて。仕事で使うなら貰えないよ。私にはこれがあるから大丈夫だよ。あ、小鳥遊くんにもあげるね。はい。」 中宮さんはカバンから可愛く個包装されたキャンディーを取り出して僕に差し出した。 「ありがとう…」 中宮さんの優しさと高い女子力に僕はキュンとした。 「あのさ、中宮さんさっきの話なんだけど、ほら中宮さんたちを天才にするって言う。その…良かったら朝日さんに直接会って話してみたいんだ。その方が具体的にイメージが湧くというか…。」 「なるほど~さすが小鳥遊くん。それ朝日ちゃん絶対喜ぶと思う!」 早速聞いてみるねと嬉しそうに中宮さんはケータイを取り出した。 朝日さんと会える日は思っていたよりすぐだった。 中宮さんと話をした2日後の放課後に朝日さんとうちのカフェで待ち合わせをする事に決まった。 うちのカフェにした理由は、3人で飲み食いしても僕のバイトの頑張りで払えるからだ。 孫の特権を使えるのは学生の僕には非常にありがたい。 やっぱり中宮さんと中宮さんの親族にはカッコイイところを見せたいんだ。 「中宮さん、此処ここ。うちのカフェ」 朝日さんと会える日の放課後、うちのカフェの道案内をするため僕らは一緒に帰った。 「どうぞ」 僕は扉を開けて中で扉を押さえながら中宮さんを店内にエスコートした。 まぁ漫画やドラマみたいに上手く出来てるかは分からないけど。 ありがとう…という中宮さんの繊細な声をかき消すようなハツラツな声で「いらっしゃいませ!」と祖母ちゃんが言った。 「あ、えっとおじゃまします。」 「祖母ちゃん、同じクラスの中宮さん。あとで中宮さんの従姉も来るから。」 中宮さんのおじゃましますが可愛すぎて僕はニヤけてしまった。 「初めまして。聖の祖母です。ここはお店だからそんなにかしこまらなくて良いのよ。いつでも気軽に来て下さい。」 そう言うと祖母ちゃんは優しく微笑んだ。 「ちょうど今、お客様あなたたちだけだから好きなところに座ってね。」 「じゃあ中宮さんここの窓際の席で良い?ここだと外の景色がキレイなんだ。ガーデニングも見れるし。」 僕はこの店で一番とっておきの場所に彼女を案内した。 「ありがとう。ねぇ小鳥遊君、このお店とっても素敵」 「本当?そう言ってくれると嬉しいよ。うちハンドメイドカフェなんだ。祖母ちゃんの趣味でね。ここのパーツとか道具で手芸を楽しみながら、お茶が出来るんだ。」 中宮さんは目を輝かせながら店内を見ていた。お菓子作りが趣味だからこういうの好きなんだろうな。 そんな可愛い中宮さんに見惚れていたらカラーンと店の扉が開くベルの音がした。 「朝日ちゃーん!」 中宮さんが立ち上がって手を振った。 こうして僕は朝日さんと出会う事になるのだ。
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