【風のけいむしょ】

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「お前って優しいいい奴なんな。」 思わずもらい泣きしながら彼が言う。 「世界をぶっ壊した大犯罪者が来るって聞いてたからよ。てっきりメチャクチャいかつい奴が来るもんだと思ってたけど、とんだイイ男じゃないか。 女のコを守る為に世界を敵に回しちまうなんてよ〜!」 彼があんまり褒めるもんだから少し恥ずかしくなり モジモジしながらルーホーは答える。 「別に僕はそんなつもりじゃあ、、、」 「いぃや!違わねぇ!!お前はカッコいいよ!」 彼のその明るさと言葉に 肩を叩かれたような気がして、 ルーホーは牢獄に居ながらも救われていく自分に気付いた。 「そうだ!自己紹介まだだったな!俺は"ウォルス"!!ここにはかれこれ5年位居る!分からないことがあったら言ってくれ!」 「この監獄の事から看守の家族構成までww俺の地獄耳に知らない事はないぜ!」 こうして、ルーホーとウォルスの 監獄での生活が始まった。 それから1週間が経ち、 ルーホーは監獄での生活に慣れていた。 「1階層のギャバンとかいう囚人が屁をこいて捕まったらしくてな、、、」 「ハハハ、、、なにそれ!おっかしー」 ウォルスとの会話も日常的となり、 静かな監獄の中でお互いを理解し合う二人。 ウォルスは糸電話で得た情報を 真面目なルーホーは大学で学んだ風職人としての知識を勉強会のように話す。 そんな事を繰り返すうちに 格子が隔てた二人は いつしか尊敬し合える存在となった。 しかし、救われていくルーホーに世はさらなる残酷な試練を課す。 「いや〜俺なら屁で捕まったら恥ずかしくて二度とここから出たくな、、、」 そう話しているウォルスの耳に刑務所各所に 張り巡らせた糸電話から異常事態を聞きつける。 「おい!ルーホーに合せてくれ!!大変なんだ!」 そう、パンデモニウムの面会室に駆け込むのは アトモスフィア。 「!!」 ウォルスはルーホーと、いう名前に反応し 聞き耳を立てる。 「だから!その囚人には会わせられないと言っているだろ!!」 「いや、街がヤバイんだって!ルーホーの管理する街が!」 「おい!ルーホー。お前のダチか何かが慌てて来てるぜ。街がどうとかって、、、。」 「え?」 救ったはずの街。それがまた危機を迎えている。 「ルーホーの街が!大雨で川が氾濫して、 街が水没しそうなんだ!!」 それはルーホーの気候変動によって起こった弊害。 街の天気を変え、世界の気候が狂い、 それが回り回って、 罪を償え!とも言うかのように街に降りかかる。 「え!?何で!!どうして!? 僕の救った街が、、、」 ウォルスから伝えられた街の再びの危機。 ルーホーが街の管理に就任して以来 川の氾濫なんて起きた事も無かった。 ルーホーが目を瞑り 記憶の中の街を飛ぶ。 川が氾濫し、街が水没しそう、、 と、言う事は、、、 「街外れにあるブルーのチューリップ畑!!」 ちょうどそこは川と街の真ん中に位置していた。 外界の街では 慌ただしく流れ込む川の流れに必死で対応する。 そんな中走り出したブルーは 大切に育てたチューリップ畑の方へ向かっていた。 しかし、チューリップ畑があった! であろう場所は花びらが散り散りの 川と化していた。 「そんな、、、。」 街に被害を出す川の流れ。 それはどう考えてもチューリップ畑への被害は免れない。 「ブルー、、、。」 ブルーの悲しみが伝わるかのように ルーホーの頭にはあの時の 父を待つブルーの悲しむ顔が浮かんでいた。
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