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年末はテレビが楽しい。
六畳一間を占拠するでっかいソファベッドにはあえて座らず、ソファを背もたれにしながら体育座りで畳に腰を落ち着けテレビを見る。畳の目を撫でながら過ごす日常。ああ幸せ。
なんか年越すぞーって頑張ってる気がして、あんまりイベント事に盛り上がらない僕の代わりに盛り上がってくれてる気がするからテレビは好きだ。特に年末の予定が無かったから僕はずっとテレビのチャンネルをいじっていた。つい最近まではクリスマス特集で忙しかったのに、今は年末年末うるさい。いつの間にクリスマスは終わったのだろう。
「お前がウチの前でぶっ倒れてた日だよ。」
同じくソファを背もたれに座る千秋が不満げに言う。
そういえばそんな気がする。まぁその数日前から高熱で生死の境をさまようように生活してたから時間の感覚が無かったわけだけど。敢えて千秋に言う必要は無いや。
そもそも僕は自分がなんで千秋の家に来ようとしたのか覚えていない。ただ、明らかに体調がおかしいと思いながら保険証が探せず病院に行けなかったから、薬局の薬と冷えピタでなんとか生活してたとき、ふと思いついたんだ。
千秋今なにしてるんだろ…
母さんが長期休暇をとってグアムに行くって聞いたとき、この世の終わりみたいな顔して動かなくなったダメ男。
可南子さんを止めてくれ、と年下の僕に懇願する情けない姿。
そんなに好きならついて行けば良かったじゃん。ストーカーのごとく。
グアムでグアム料理ほっといて母さんの料理食って満足してりゃ良かったじゃん。
考えれば考える程、千秋が可哀想になってきた。今頃きっと、可南子さん不足で息も絶え絶え生活してるんだろな。
そんな顔見て笑ってやりたい。爆笑してやるんだ。
…
顔見よう。
見に行こう。
確かこの前酔って歩けなくなった千秋を田中さんと一緒に連れて帰った。
どう行くんだっけ。
確か………
多分僕はそのままフラフラ家を出たんだと思う。
良く覚えていない。
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