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「…い。おい!」
「…ぇ?」
「どうした?体辛いか?」
ふと我に返ると千秋が至近距離で心配そうに僕を見ている。頭に当てられた大きな手がひんやりして気持ちいい。
「やっぱり病院行くか?ずっと微熱が続いてるし。気分も良くねぇだろ?」
「だからこの時期はいつもこうなんだって。ほっといてよ。」
「………………ほんっとに可愛く無いガキだな」
「ダメ男よりは可愛いよ。第一高校生の男に可愛いは無いでしょ。」
「お前のどこが高校生に見えんだよチビ。自炊出来てから言え。」
「高校生は普通自炊なんかしないもん。」
「俺はしてた」
「うっわ気持ち悪。友達いなかったデショ」
「そのまま返すよ糞ガキ。」
言葉の応酬をしながら、気分が悪いのをごまかす。ダメ男は心配性だから余計に甘えられ無い。こーいう無駄に人に優しいとこが母さんにそっくりだと思う。
「あー眠っ」
さり気なくソファに横たわって目眩をやり過ごす。目の前には千秋の茶色い頭。頭髪違反だなんて、公務員のくせに色気づくんじゃない。うちの高校そういうの凄く厳しいんだぞ。
サラサラした髪を触っていると、千秋がテレビを消した。
「見ないの?」
「うっせ。寝てろ」
低い声で千秋が言う。
なんだ気付いてたのか。そういうとこ母さんに似てないよね。
嫌いじゃないけど。
体がゆるりと弛緩する。ソファと一つになったみたいだ。
……
意識が遠のきそうになる直前、千秋が急に立ち上がるもんだから、慌てて千秋の服の裾を掴んだ。
「うお。どした?寝とけって。」
「どこ…行くの?」
「毛布取りに行くだけだよ離せ」
「別にいらないよ」
「俺の分だよ。」
「あそ。じゃ余計いらない」
「なんでだよ。良いから離せ。」
「やだ」
「あのな」「出掛けるときは言ってね」
「……」
「別にどこに行こうが気にしないけど、出掛けるときは教えて…起こして良いから」
そのまま僕は眠りにつく
こんなんじゃ出掛けられねぇだろ…
千秋の声が聞こえた気がする
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