オマケ〜訪問者〜

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「撮影でイタリアに行ったから、お土産を届けに来たの」 そう言って、俺にもお土産を手渡してくれた。 「え?俺にもですか?」 と言いながら袋を開けると、高そうなブランドの財布が入っていた。 「えっ!こんな高そうなの貰えないです」 慌てる俺に、紗那さんはにっこりと微笑んで 「良いの、良いの!この間のお詫びだから」 そう言うと 「那智とお揃いだから、2人で使って」 と、にっこり微笑んだ。 俺が那智の顔を見ると、『貰っとけ』ってアイコンタクトして来た。 「あの……ありがとうございます」 頂いたお財布を握り締めて言うと、紗那さんは再び俺に抱き着いて 「可愛い〜!雄也君、那智なんか止めて私と付き合わない?」 なんて言い出した。 「あ〜ね〜きぃ〜!」 怒り出した那智を背に 「あの!俺、那智以外とは付き合えないです」 と答えた。 「俺、那智と中途半端な気持ちで付き合っていないので」 そう答えた俺に、紗那さんは満面の笑みを浮かべて 「だって、那智。良かったね」 と呟いた。 そう言われて、驚いて後ろに居る那智の顔を見ると、泣きそうな笑顔を浮かべていた。 俺が驚いて那智の顔を見ると、那智は俺の肩に額を当てるようにして 「今の顔を見ないでくれ」 って言われてしまう。 そんな那智を、紗那さんは優しい笑顔で見ると 「良かったね、那智。ずっと片想いしてたからね。雄也君、こいつって本音が分かりずらい奴だけど、君を好きな気持ちは本物だから」 そう言って俺を真っ直ぐに見つめ 「2人が仲良くしてくれてると、私は嬉しいよ」 と言って微笑んだ。 そして時計を見ると 「あ!そろそろ帰らなくちゃ。雄也君、またね」 紗那さんはバタバタと慌ただしく帰宅の準備をして玄関に向かう。 那智はゆっくりと俺から離れ、紗那さんを玄関まで見送っている。 「那智、またね」 「あぁ……。今度来る時は、先に連絡して来いよ」 ぶっきらぼうだけど、本当は喜んでるのは俺には分かる。 靴を履いて、紗那さんが那智の身体の横から顔を出して 「じゃあね、雄也君。またね」 と手を振って帰って行った。
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