651人が本棚に入れています
本棚に追加
「なっ……なんでこうなるかなぁ」
肩をひそめ、冷や汗を垂らしながら土を踏みしめていく。夜の山道は、鬱蒼たるその身で人間の無力さを掻き立てて、不安にさせてくる。
この無性に逃げ出したくなる気持ちは、代々のご先祖様の培った経験が、無意識に自分へと警告しているのだろうか。
それともこれは単に僕が怖がりなだけの言い訳だろうか。いや、今はそんな事どっちだっていい。
僕の名前は喜一茉理。ド田舎からえっさほいさと遥々東京まで上京し、全てが真新しい都会の大学生ライフを送ろうとしていた大学一年生だ。
これからも安全かつ、楽しい学生生活を送れると思っていた。思っていたのに……!
こんな夜中に、心許ない懐中電灯の明かり一つで、山道を登らなければいけない理由が残念出来てしまった。それは遡ること三日前……
最初のコメントを投稿しよう!