或雨の日

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 空が急に暗くなり、小粒の雨が降り始めた。  夕立だ。と思った俺は、急いで近くのコンビニに入った。  学校から駅までに、スーパーなどは無く、コンビニはここしかない。  俺はすぐにビニール傘を買って店を出ようとした。すると、店の自動ドアの横の壁にそって立つ少年と少女がいた。兄妹らしかった。  おつかいから帰る途中なのか、少年は大きな荷物をもっていた。そして二人とも傘を持っていないようだった。  雨脚はさっきよりさらに強くなった。暫く止みそうにない上に、店の狭い屋根では雨宿りができないだろうと思った俺は、少年達の横で言った。  「あっ……しまったぁ。折りたたみ傘持ってるのに余分に傘買ってしまったわ」  俺を見て驚いてる少年達を見て笑うと、俺はそっと傘を差し出して言った。  「悪いけどこれ、貰ってくれるか? 捨てるのもったいないからな」  「……うん、ありがとう」  少女は笑ってそう言うと、少年と一緒に俺におじぎをした。そして開いた傘の中に、荷物を持った少年と傘を持つ少女が入り、二人はゆっくり歩いていった。  俺はそれを見守ると、コンビニの中に入って、マンガの週刊誌を立ち読みした。  普段は立ち読みしてると注意してくるメガネのおじいさん店員は、客のいないレジの中で大人しくしていた。  暫くして、雨が止んだ。俺は静かにコンビニを出て駅に向かって歩くと、少し前の空に大きな虹がかかっていた。  
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