Blood Red Sun

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 ウイスキーをまた一口飲んだダグの言葉に、昔の嫌味が混じった。 「しかし、ここに住まわせてもらえるほど爺に気に入ってもらえたようで、良かったな。……飲んだくれのお前の親父はどうなった? それこそ置いてきぼりか?」 「とっくに死んだよ。酔って、川に落ちた」  そう言った口元がうっすら笑った。  ふたりともほとんど同時に、グラスに口をつけた。  ダグが咳払いをし、男はソファのクッションを直すようなそぶりをしながら、グラスを持った手をダグの座る椅子に向けた。 「……あの日、私はそこに座って、彼はここに。そして、『お前には手を出さないから、安心して本をお読み』と」  ダグの顔に下品な笑みが浮かんだ。「手を出さない?」 「あ、誤解を招く言い方だったな」  ダグを見る薄い青の目に、ランタンの光が燃えた。そして、冗談を言うような、軽い口ぶりでその言葉を口にした。 「ときどき、人の血を味わいたくなるんだ、ってさ」  ダグは自分がこれからしようとしていることを棚に上げて、顔を歪めた。 「はあ? ……どのみち、変態じゃねえか」 「それ以外はまともさ。本当は人間の血の味が一番いいんだが、まあ、普段はレアのステーキやレバーのパテ、ブラック・プディング(血のソーセージ)で何とか折り合いをつけてる、と」 「もし爺がどうしても人の血をすすりたくなったら、どうすんだよ」 「どうしても衝動を抑えきれないときは、大きな街へ行く。一日に一人は人が殺される、街。そこへ行く。鷲の羽を生やしてね」両腕を大きく広げた。 「そして、全身を真っ赤に染めて、ご帰宅」
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