Blood Red Sun

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 ダグは心の中でうええ、と舌を出した。オタク、っていうのか。ずっと家に籠って本ばっかり読んでると、こんな風になっちまうんだな。 「で、その吸血鬼爺さんはどこに? 死んだのか?」  かすかな含み笑いの音がした。くっくっくっくっ。「地下室で眠ってるんじゃない?」  ――地下室。秘密。闇。この屋敷を我が物にしようと、暗い地下室で爺を殴り殺している男。  その光景が、ダグの頭に閃いて消え、彼は身構えるように椅子に浅く腰掛け直した。  けれど、男は自分の胸を指さし、静かに言った。 「嘘だよ。この屋敷に地下室はない。生きてるさ。永遠に」  心の中でなんて、回りくどい気取った言い方しやがって、とダグはわざとからかうように言った。 「しかし、爺がそんなに街に血を吸いに行ってたんなら、世の中吸血鬼だらけだろうに。会ったことないぞ」  また、くっくっくっ、と笑い声がした。 「それ、みんな誤解してるよね。ニンニクがだめ、十字架がだめ、牙がある、日光に弱い、血を吸われたら吸血鬼になる。……血を吸えば、相手は普通に死ぬんだ。吸血鬼にするにはにちゃんと手順があって……まあ、いいや。こんな話、君にはつまらないだろ」 「いや。怖い話だな」  今度はダグがくっくっくっと笑った。それから少し間を置いて、息を大きく吸った。 「ところで、ノエル。頼みがあるんだ」
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