3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ダグは心の中でうええ、と舌を出した。オタク、っていうのか。ずっと家に籠って本ばっかり読んでると、こんな風になっちまうんだな。
「で、その吸血鬼爺さんはどこに? 死んだのか?」
かすかな含み笑いの音がした。くっくっくっくっ。「地下室で眠ってるんじゃない?」
――地下室。秘密。闇。この屋敷を我が物にしようと、暗い地下室で爺を殴り殺している男。
その光景が、ダグの頭に閃いて消え、彼は身構えるように椅子に浅く腰掛け直した。
けれど、男は自分の胸を指さし、静かに言った。
「嘘だよ。この屋敷に地下室はない。生きてるさ。永遠に」
心の中でなんて、回りくどい気取った言い方しやがって、とダグはわざとからかうように言った。
「しかし、爺がそんなに街に血を吸いに行ってたんなら、世の中吸血鬼だらけだろうに。会ったことないぞ」
また、くっくっくっ、と笑い声がした。
「それ、みんな誤解してるよね。ニンニクがだめ、十字架がだめ、牙がある、日光に弱い、血を吸われたら吸血鬼になる。……血を吸えば、相手は普通に死ぬんだ。吸血鬼にするにはにちゃんと手順があって……まあ、いいや。こんな話、君にはつまらないだろ」
「いや。怖い話だな」
今度はダグがくっくっくっと笑った。それから少し間を置いて、息を大きく吸った。
「ところで、ノエル。頼みがあるんだ」
最初のコメントを投稿しよう!