Blood Red Sun

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「何?」 「ちょっと、その、金が入り用で。お袋の具合が悪いんだが、治療費がかさんじまって。あとで必ず返すから」 「だと、思ったよ」 「……いいのか」 「いいや。金の貸し借りはしない主義でね。揉め事のもとだ」 「頼むよ」 「嫌だね」 「頼む」 「嫌だ」 「なあ、友達だろ」 「……友達?」  暖炉でまた火がぱちりとはぜた。 「私が知ってるダグ・ジョーンズを教えてあげようか。自分よりも弱いと思ったらとことんこき使い、言うことを聞かなけりゃ殴り、あげくにお化け屋敷に人を置いてきぼりにする。それが、友達?」 「いや、だって、それはさあ」  暖炉で大きく火がばちんと音を立てた。 「お前は友達なんかじゃない。ノエルに張りつく淋しい寄生虫だったんだ」  耳に入ったその言葉は、ダグの体を突き抜け、足先まですとんと落ちた。  次の瞬間、ダグの蛇は猛烈な炎を噴き上げ、今度は足先から頭へとダグを一気に燃え上がらせた。「……なんで」  ノエルが自分を要らないと言ったあの放課後が、目の前に再び現れた。  胸にこみ上げたのが怒りなのか、それとも別の何かなのか分からずゴミ箱を蹴飛ばした、あの一瞬が、現れた。 「……なんで、そんなこと!」  ダグは電気コードをひゅるりと取り出し、ためらうことなく男の首にコードを巻き付けた。  馬乗りになったダグの下で、長い髪が躍る。両手がダグの服を鷲掴みにし、暴れまわる。青白い顔がみるみる真っ赤に変わっていく。  ダグの腕の血管が浮き、力が入る。ぎりぎりと。   ちくしょう。   金を無心するなら、他の奴でも良かったんだよな。   強盗に入るなら、他の家でも良かったんだよな。   もしかして俺は、最初っからこいつを殺したかったのかな。   ちくしょう。   あの世で。   爺と。   仲良く血でも舐め合いな。
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