3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「何?」
「ちょっと、その、金が入り用で。お袋の具合が悪いんだが、治療費がかさんじまって。あとで必ず返すから」
「だと、思ったよ」
「……いいのか」
「いいや。金の貸し借りはしない主義でね。揉め事のもとだ」
「頼むよ」
「嫌だね」
「頼む」
「嫌だ」
「なあ、友達だろ」
「……友達?」
暖炉でまた火がぱちりとはぜた。
「私が知ってるダグ・ジョーンズを教えてあげようか。自分よりも弱いと思ったらとことんこき使い、言うことを聞かなけりゃ殴り、あげくにお化け屋敷に人を置いてきぼりにする。それが、友達?」
「いや、だって、それはさあ」
暖炉で大きく火がばちんと音を立てた。
「お前は友達なんかじゃない。ノエルに張りつく淋しい寄生虫だったんだ」
耳に入ったその言葉は、ダグの体を突き抜け、足先まですとんと落ちた。
次の瞬間、ダグの蛇は猛烈な炎を噴き上げ、今度は足先から頭へとダグを一気に燃え上がらせた。「……なんで」
ノエルが自分を要らないと言ったあの放課後が、目の前に再び現れた。
胸にこみ上げたのが怒りなのか、それとも別の何かなのか分からずゴミ箱を蹴飛ばした、あの一瞬が、現れた。
「……なんで、そんなこと!」
ダグは電気コードをひゅるりと取り出し、ためらうことなく男の首にコードを巻き付けた。
馬乗りになったダグの下で、長い髪が躍る。両手がダグの服を鷲掴みにし、暴れまわる。青白い顔がみるみる真っ赤に変わっていく。
ダグの腕の血管が浮き、力が入る。ぎりぎりと。
ちくしょう。
金を無心するなら、他の奴でも良かったんだよな。
強盗に入るなら、他の家でも良かったんだよな。
もしかして俺は、最初っからこいつを殺したかったのかな。
ちくしょう。
あの世で。
爺と。
仲良く血でも舐め合いな。
最初のコメントを投稿しよう!