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相談
カズの姿が急にぐにゃりと揺れた。
「え・・・・」
「わ・・・」
「なになに?」
どうやら二人も私と同じようになっているらしい。
「いや~。気持ち悪い」
これで二回目だ。一体どうしてしまったのか・・・目をしきりにこすったり頭を振って見たりといろいろして見るが中々戻らない。
「ちょっと待って落ち着いて。さっきも同じことあったわよね。慌てずに少し待ちましょう」
流石カズだ。一人冷静になり慌てふためく私達にぴしゃりとそう言うと、じっと動かず視界が戻るの待つ。私達も慌ててそれにならう。
「あれ?ちょっと見て。村の人達がいないわよ」
「え?あ、本当だ。何処に行ったのかしら」
「・・・・やっぱり」
「なに?カズちゃん何がやっぱりなの?」
「何となくだけどね。私達の目がおかしくなるのって、そのタイミングでこの村に変化が起きてるんじゃないかなって思ったの。だって考えて見て、さっき目がおかしくなった時今まで聞こえてこなかった村の人達の声や生活音が聞こえて来たでしょ?」
「確かに・・」
「きっとまた今回も何か変わっている事があるわよ。現に今村の人達が一人もいなくなってる」
「なるほどね。カズちゃん凄いわ。よくそんな事思いつくわね」
「当り前よ。だって私だもん!」
と言って、サラサラヘアーをなびかせる。おねえは常に自信家である。
「じゃあどういう変化があったのか確認しに行きましょうよ」
「そうね」
「ちょっと待って~私足が痛くて・・・ここで待っててもいい?それに魔法が解けちゃうかもしれないからさ」
「しょうがないわね。いいわよそこで待ってて。私達の荷物も見ててよ」
私とカズは、ゆかっちをその場に残し消えた村人達を探しに行った。
「ねぇカズちゃん。さっきゆかっちが「魔法が解ける」なんて言ってたけど、どういう意味?」
「ああ。それはね。ゆかっちは髭が濃いのよ。永久脱毛やっても、次の日には生えてくるんだから。はははっ!凄い勢いでしょ?」
「永久脱毛したのに⁈それはヤバいわ」
「で、本人は夜の八時きっかりに髭を剃るって習慣づけてるらしいの」
「何で八時なの?」
「さぁ。人の髭事情まで知らないわ」
そんな事を話しながら一軒一軒近くの家から中の様子を伺っていく。家から漏れるほのかな灯りの正体は、どの家も囲炉裏と部屋の隅に置かれた皿のからの灯り。恐らく皿の中には油があり紐を軸として燃やしているのだろう。その灯りの中、囲炉裏の近くに座り頭を垂れている人や横になる人。影からして女や年寄りのようだ。
「男達はいないようね」
「うん」
「次はあそこね」
私達は最後となる家へと急いだ。
近付くと、引き戸が開けられており戸口の所に数人の村人が家の中を見ながら立っているのが分かった。念のため村人達に見つからないようにそっと家の裏手に回る。そこにはガラスのない窓のような物があり中の様子を見ることが出来た。覗いてみると家の中には大勢の村人達がいる。狭い部屋いっぱいに村人達が座り何やら話している様子だ。外の戸口の所にいた人は部屋に入りきれなかったからあの場所にいたのだろう。
「なに?みんな集まって何を話してるの?」
私はつっかえ棒で開けられたガラスのない小さな窓から顔を覗かせ村人達の話に耳を澄ませる。話はやけに深刻なものだった。
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