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一度目の話し合い
「さて・・どうしたもんかのう」
「こんなに続くとは・・」
「もう俺も母ちゃんも限界が来とるでの」
頭を垂れため息交じりに話す村人。
「もうこれしかないじゃろ」
腕を組み、恰幅の良い村人が一同を見渡し言った。
その声に村人達は一斉に頭をあげ色めき立つ。
「なんじゃ?」
「何かいい案でもあるのか?」
「八兵衛、早く教えろ!」
口々にそう言いながら詰め寄る。
(八兵衛?どこかで聞いたような・・)
その名前を聞いた私は何処で聞いたのか咄嗟に思い出せないでいた。誰かに聞いたのかそれとも本で読んだのか考えている時、次に聞こえてきた言葉は耳を疑う言葉だった。
「口減らしじゃ」
その瞬間、家の中だけでなく村全体の空気が重くなったような気がした。私自身も、腹の中に大きな石を詰め込まれたような感覚になる。
(口減らし・・思い出した!八兵衛ってあのサイトに載っていた日記に書かれていた名前だ。確か「ここに書くのも恐ろしい」ってあったけどこの事だったのね)
口減らしまたは間引き・・・経済的理由から養うべき人を減らす事。
と、何かに書かれてあったのを読んだような気がする。
どこかの家に奉公に出したり、産まれてきた子供をすぐに殺したり、はては子供が一人では帰ってこれない場所まで連れて行き置き去りにしたり。
今では考えられないような事が昔の日本では行われていたと聞く。
この村も日照りと言う自然災害を受け、困窮した村人達はその口減らしをやろうというのか・・
私は事の成り行きを見守る事にした。
「は、八兵衛?」
「うん?」
「口減らしと言ったのか?」
「そうじゃ」
「お前、口減らしと言うものがどういうものか知ってて言ってるのか?」
「勿論じゃ」
「そんな・・」
「八兵衛。それはいくらなんでも・・」
「そうじゃ。まだ水も食料もある。雨だって明日には・・いや明後日には降るかもしれん」
「そうじゃ。もう少し様子を見よう」
八兵衛の提案に驚き恐れをなした村人は、口々にそう言った。
「いつ降るかもしれん雨を待ち続けるんだぞ?それが短いか長いかなんて誰にも分からん。神様にしかな。お前の言うように、明日明後日頃に振ってくれればいいが降らなかったらどうする?」
「・・・・・・」
「長期戦を考えて行動したほうがいいんじゃ。何でも最悪の事を考えて行動しておけばなんにでも対応できる。でも、安易に考えているとその時は持ってかれる」
「それはそうじゃが・・」
(ん?持ってかれる?誰に?そう言えば浜野さんもそんな事言ってたような・・・)
~朝まで目を開けたらいかん。持って行かれるでの~
「あっ!」
思わず大きな声を出してしい慌てて口を押さえる。
その声に驚いたカズは、口に人差し指をあて「しぃ~っ」と慌てて言う。咄嗟に家の中にいる村人の様子を見るが、誰も気がついていないのか先程と変わらず話し合いが続いている。
胸に手を当てホッとすると、隣にいるカズに小声で話をした。
「ねぇ大変よ。今気が付いたんだけど、私達浜野さんとの約束破っちゃってない?ほら、朝まで目を開けたらいけないって事。それに洞窟から出たら村に入らないで山沿いに歩いて行くっていうのも・・」
てっきり驚くかと思っていたが、カズは表情を変える事なく
「知ってるよ」
とあっさりと言った。
「知ってるって・・だって、約束破ったら私達持って行かれるんだよ?」
「何処に?」
「何処に・・ソレは分からないけど・・」
「でしょ?私のお婆ちゃんもよくそんな感じの事を言ってたのよ。子供に悪い事をさせないために、何々がくるぞ~とか、お腹が痛くなっちゃうぞ~とかね。浜野さんの約束もそれと一緒じゃない?」
確かにそう言う事はあるかもしれないが・・ソレはどちらかと言えば戒めのような意味合いが強いのではないか。浜野さんのはどちらかというと忠告と取ることが出来る。
カズはソレが分かったうえで言っているのだろうか。
そんな事を考えている内に話し合いが終わったのか、村人達が家から出て行き始めた。
(なに?どういう話になったの?)
私とカズは、そっと家の裏から表の方へと回ると家路につく村人達が口々に話す会話に耳を澄ました。
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