俺と言う存在

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「あ、あの・・」 予想外の二人の出迎えに驚き、部屋の入口で引き気味でいると 「まぁまぁ入って入って!」 金髪おねえが俺の手を取り部屋の奥へと連れて行く。 倉庫みたいな狭い部屋だったが、その狭さを感じないよう物が配置されセンスの良さをうかがわせるような部屋だ。女の子の部屋のように置いてある物全て、可愛い物で埋め尽くされている。 「さ、ここに座って!あ、ゆかっち紅茶があったわよね?」 「そうそう。ちょっと待ってね」 (あったわよね?待ってね?) いそいそと棚の上にあるカップにティーバッグを入れお湯を注いでいるアフロを見ながら、俺は驚きと共に少し興奮してきていた。 金髪おねえは俺の前に座り細い足を組むと、切れ長の目を俺に向けニコニコしながら品定めするように上からゆっくりと舐めるように見る。 「合格ぅ」 指でOKサインを作り、真っ赤な口紅を塗った口を尖らせ言った。 「は?」 「良かったぁ~。合格ね!よろしくぅ!」 くびれのない腰をくねらせながら俺の前に紅茶の入ったカップを置いたアフロおねえが、嬉しそうに言う。 「合格って・・・あの・・」 「あなたもダイアモンドの仲間入りって事!」 金髪おねえは上目遣いで俺を見ながら言った。 この金髪おねえは、さらさらヘアーが自慢なのかしきりに顔を振り髪をなびかせる。 「仲間って・・」 「ねぇカズちゃん。まずこのサークルの説明をしなくちゃ駄目じゃないの?」 ゆかっちと呼ばれたアフロおねえが、ガタガタと椅子を引きずり俺の横に座りながら言った。 「そうね。焦り過ぎて順番が逆になっちゃったわ」 カズちゃんと呼ばれた金髪おねえは、コホンと咳ばらいをし姿勢を正すと説明し始めた。 「私達のサークルの活動は、美容に関しての研究とBLの沼にはまる事。将来自分達のお店を出したいからソレのお勉強。後、メインがオカルトと・・」 カズちゃんはそこで言葉を切り盛大に顔を振り、サラサラヘアーをなびかせ俺を上目遣いで見ると 「日本の歴史」 と言った。 「はぁ?」 先程の美容やらBLやらと全く結びつかない言葉に、俺は変な声を出してしまった。 「やだぁ~!その顔可愛いぃ!でもね。本当の話、ソレがメインなのよ」 アフロ・・いや、ゆかっちが手を叩きながら俺の顔を誉めてくれるが、直ぐに真面目な顔になるとそう言った。 「日本の歴史・・あの授業で習うような歴史って事ですか?」 「違う違う!そんなつまらない事じゃないのよ」 カズは、アイブロウで綺麗に整えた眉毛を寄せながら否定すると 「日本にはね、公に出来る歴史と出きない歴史があるのよ。私達が知りたいのは、そういう裏の歴史を知りたいの。そういうものは必ずと言っていいほど、人を不快にする事柄が隠れてるものなの。少し突飛すぎるかもしれないけど心霊の類とかね」 「そうそう。私達弱そうに見えるけど、すっごいオカルトマニアでもあるのよん」 ゆかっちが素早くウィンクして言った。 (弱そう・・・には見えないが・・)一応口には出さず、心の中だけに留めておく。 「そうねぇ。例えを上げるとしたら・・人で言えば、建前と本音という所かしら。そう言った不思議系による日本の本音の部分を知りたいのよ」 「裏の歴史・・・日本の本音・・」 俺は、一体裏の歴史とはどんなものがあるのだろうと考えカズから目線をずらした。 その瞬間 「ああっ!もしかしてさ・・あなた・・」 カズは驚いた様子で口を手で押さえると、次になにやら思案顔で言った。 「なんですか?俺・・何か・・」 「私達と同じ匂いがする。違う?」 探るような言い方をした後、片方の口角をあげ嫌らしく笑った。 「・・・・・」 どうしてわかったのか。後で、この時の事を聞いたら、目の動きで俺の中にある女を見抜いたそうだ。 そう。カズの言う通り、俺はこの部屋に入ってからというもの驚きの連続ではあったが、どこか懐かしいような・・安心するような・・田舎のお婆ちゃんの家に行ったような・・上手く言えないが、とにかく自分の居場所はここだったんじゃないかと言う気持ちになっていたのは間違いない。 俺は思い切って自分の奥底にある本当の自分の事を話して聞かせた。 本当は男が好きな事。男である自分に違和感を感じていた事。ソレをひた隠しに隠して自分を偽りながら生活して来た事。そんな自分を抱えながらこれからも生きて行くのかと言う不安があった事。 「・・・・と、言う訳なんです」 二人は、何も口を挟まず真剣に話を聞いてくれていた。
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