一度目の話し合い

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「どうして他の村の人は私達と話すことが出来ないのに、あなたは話せるの?」 「そうそう!それも聞こうと思ってたんだ!」 ゆかっちがパチンと手を打つ。 聞かれた女の子はまたも首を傾げると 「分かんない」 と言った。 やはり小さい子には何を聞いても無駄だったのか・・ 「そっか。分からないか・・」 「でもね。私一つだけ知ってのあるよ」 「え?なに?」 「でも・・母ちゃんが誰にも言っちゃいけないって言ったんだ」 私達は顔を見合わせた。もしかしたら、探し物のヒントになるかもしれない。 「も誰にも言わないから教えてくれる?」 「そうそう。絶対に誰にも言わない!」 「約束する!」 何が聞けるのかと、私達の期待は高まる。 女の子は暫く言っていいものなのか迷っている様子だったが 「・・母ちゃんがケンサンにある物を見ちゃいけないって」 「え?ケンサン?見ちゃいけない?探し物じゃなくて?」 「うん。探してる物なんてないよ。この前貴ちゃんが帯紐失くしたって慌ててたけど、それも見つかったし」 「帯紐・・いや、そういう日常の探し物じゃなくて」 「カズちゃん。まだ小さい子なんだから分からないわよ。そうなんだ。貴ちゃんの帯紐が見つかって良かったね」 ゆかっちがカズを諫め、女の子に向かって優しく微笑みながらそう話した。 「うん!」 嬉しそうに頭を振り頷く女の子。チリンとまた涼しい音がした。 その時だ。 又視界がぐにゃりと歪んだ。これで三回目だ。水の中で目を開けたようなぐにゃりとした視界。何とも不快である。一度目の歪みが収まった後、聞こえなかった村人達の声や音が聞こえるようになり、二度目の歪みは村人達の話し合いの場になった。 今度は・・何が変わるのかしら・・・ 徐々に視界が元に戻って来た。
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