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「あれ?」
さっきまでいた女の子がいない。
「あの子は?」
「おかしいわね」
「それにしてもあれ、何とかなんないのかしらね。あのぐにゃぐにゃした視界は慣れないわ~。気持ち悪くなっちゃう」
ゆかっちは頭を振る。
「また何か変わってるのよきっと。さっきの八兵衛の家へ行って見ない?」
「そうね」
私とカズは立ち上がる。
「ちょっと待って!今度は私も行く」
ゆかっちは、ふくよかな体を揺らしながら慌てて立ち上がる。さっきよりアフロが形よく盛り上がっているので、少しは元気を取り戻したようだ。
三人で八兵衛の家へ向かい、戸口の近くにある窓から中の様子を伺った。
「やっぱり」
カズの言う通り、帰ったはずの村人達がまた八兵衛の家の中に集まっていた。
「あれ?おかしくない?」
「うん」
「え?・・何が?」
「もう!ゆかっちよく見て。みんな真っ黒な影だったのに薄っすら色がついてるように見えない?」
色がついていると言ってもとても薄い絵の具の色を乗せた様な感じで、はっきりとは分からないが、皆地味な色合いの着物を着ているのは分かる。手や足、顔の肌色も薄っすらと色がついているのだが、顔の部分だけは真っ黒な影のままだ。
「・・本当だ。じゃあこれが変わったって事?」
「多分ね。シッ。何か話してるわよ」
私達三人は薄い色がついた村人達の話に耳を傾けた。
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