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「だって考えてみてよ。夜になったら生き返る村。願いごとを叶えてくれる村人。確かに魅力的な言葉かもしれないけど、これってよくよく考えてみると怖くない?どうして夜になったら生き返るの?どうして願いごとを叶えてくれるの?後さ、ちょっと気になる事もあるの」
「何?」
私のこの話に、少し不機嫌になったカズが私から目をそらしながら聞いた。私は構わず話を続ける
「日記に書かれていた谷郷って誰?島の外の事を知る人物って書かれてたわよね。って事は、その当時外からこの島に上陸することが出来たって事でしょ?確か他のサイトには、上陸不可能の島で2000年に調査隊がこの島に上陸したってあった。じゃあ谷郷はどうやってこの島に上陸したの?」
「そんなの私達が入って来た洞窟から上陸したんじゃない?」
「浜野さんが言ってたじゃない。島の周りは複雑な潮の流れがあって容易には近づけないって。って事は、船で上陸するのは無理って事になる。勿論ヘリでもね。来れるのだとしたら、私達もヘリで直接この島に来てるはずじゃない?」
「・・・・・」
カズは黙り込んだ。
「そうねぇ。確かにそうよねぇ」
ゆかっちは小首をかしげながら頷く。
「それともう一つ。さっき鶏の鳴き声が聞こえたの気が付いた?」
「ああ、聞いたわ。ね?カズちゃん」
「うん」
「さっき私達が見た村人達の影やこの家は、昔本当にあった出来事を再現しているように思えるの。だとしたら、あの鶏もその当時いたという事になる。食料に困ってるのなら、どうしてその鶏を食べないのかしら。真っ先に食べそうじゃない?」
「それもそうだわ」
「確かに・・・」
「でしょ?それに・・」
「ま、あれこれ考えてもしょうがないわ。今分かっている事と私達がすべきことは、この村は夜に生き返り過去を再現しているって言う事。そして私達はその出来事を見ることが出来る。つまりこの島の暗い歴史を垣間見れるのよ。後は・・願いを叶えてもらう術を見つける事・・でしょ?」
カズは、私の言葉を遮るように言うとゆかっちに同意を求める。
ソレは分かってる。でも・・でも、本当にいいのだろうか。何となくノリでここまで来たような気がするが、自分達は触れちゃいけないものに触れているような気がする・・
私は、漠然とした不安があるのだが今のカズに帰ろうと言っても素直に帰らないだろう。
「・・・うん。分かった。じゃあこれからどうする?」
「取り敢えず、浜野のお爺ちゃんが言っていた隣村の西方村へと行って見ましょうよ」
「そうね。私一旦メイク落としたいからシートくれる?」
ゆかっちは顔を押さえて言った。
「いいよ」
「私さ、この日の為に新しいファンデ買ったんだぁ」
そう言うとゆかっちは、アフロの中から真新しいファンデを取り出した。
「ハハハ!またそこに入れてたの?本当ゆかっちのアフロって何でも入るよね!どう?結構いい?」
二人は化粧品の話題で盛り上がりながら歩き出したが、私はそんな気分にはなれなかった。
(アフロから化粧品が出て来たのは少し驚いたが)
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