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俺は明日、帰国の途につく。
湯本の駅で御巫館長とエルンストと待ち合わせの予定、その後はもう成田空港向けだ。
「今回の帰省は内容が濃すぎて、もう頭が追いついてないよ」
母ちゃんに手渡された洗濯物を自分のボディバッグに突っ込む。もうそれ以外に持って帰るものは特に無い。
階下ではもうすぐ晩ご飯で母ちゃん達は準備に忙しい。今日は手巻き寿司にしてくれるというから、ちび達もワクワクだ。
俺はとりあえず明日の帰国準備だけはしておこうと一足先に拓海の部屋に戻った。
「昂輝、大学は大変か?」
「ああ当たり前だけど全部英語だもんな、米国の大学は日本と逆で入るのは楽だけど出る方が難しい」
戻ったら新学期だ、9月から俺も2年生になる。
又勉強と修行の日々だ。
それとバイトにじいちゃんの実家の手伝いもある。タダで住ませてもらってるんだから家賃代わりに家の掃除やらだだっ広い庭の手入れやら、やることはいっぱいある。
バイトでは授業料の他の生活費分くらいもしっかり稼がないとさ。
「それでも俺はかなり恵まれてるよ、せめてしっかりやらんと」
この環境を作ってくれたじいちゃんと親父に感謝だ。
「拓海もな」
「うん?」
「やりたいことがあったらちゃんと家族に相談しろよ。お前が誰かを頼らないと、他の兄弟もお前を頼ったり出来なくなるんだからな」
この先、お前も他の兄弟達もきっと色々ある筈だから。絶対に一人で悩んだりするなよ。
大丈夫、この家族はいつだって俺たちの強力な応援団なんだから。応援してもらった分は、別な形でちゃんと返していけば良いんだ。
「俺はそれが身に染みてるとこだ、この大赤字を黒字にするまで頑張るさ」
「凄い負債になりそうだ」
「言うな、怖くなる」
そしてこの出雲家の長男と次男は顔を見合わせて笑う。
将来的にどんなデカい負債も喜んで背負う、この変わり者の兄弟は。
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