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fin
「……で、宿題は終わったの?」
「まだだよ、あまおう夕張メロン練乳を食べてないんだから」
「あのねえ、そんなメニュー出さないわよ」
「なんだって?! それじゃあ研究が進まないよ」
「妖怪の研究じゃなかったの?」
「かき氷の研究に変えたんだ」
まったく勝手な子だこと……と六花はひとりで呟いた。
「夏休みが終わったら無料期間終わりですからね」
「はーい」
生死のなかの絶えず雪ふりしきるさまを見て、人はなにを思うのだろう。「いい人生だった」とか「生まれ変わってもまた自分でありたい」とか思うのだろうか。
まったく愚かしい。人の命に意味などない。人生に理由を求めるだなんて、本当に浅ましい。
でも、だけど……。
運命というものがあるのなら。
生まれ変わりなどという絵空事があるのなら。
──いつかきっと、また会いたい。
そう思いながら、六花は今日もかき氷を作る。夏も終わるというのに、暑さの厳しい日が続く。
今日も六花堂には、たくさんの客がやってくる。
〈fin.〉
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