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「六花さん、六花さん!」
ある日の夕方、店じまいの準備をしていたところに悟が数人の子供たちと店内に走り込んできた。顔を真っ赤にしてぐったりとした少年が連れ込まれる。
「茂が真っ赤なんだ!」
「どうしよう、熱中症かも」
「すごく辛そうなの」
プールの帰り、店の前で突然倒れたらしい。その少年は見慣れた顔。たしか悟の小学校の仲間だ。
「ソファーに寝かせてあげて! いま氷を用意するわ」
「わかった」
六花は氷の塊を砕きビニール袋に入れる。急いでソファーに向かい、横になる男の子のおでこに手をあてる。
「……ひどい熱」
「そうなんだ」
「どうしよう」
心配そうに茂くんを見つめる子供達。六花はひとりの少女に救急車を呼ぶように指示をする。かなりまずい状況な気がする。名前を呼びかけても反応がなく、呼吸が荒い。熱中症の場合、最悪死んでしまうことだってあるはずだ。
「ねえ、悟くん。ちょっと店から出ていってもらえないかしら」
「え、どういうこと?」
「ちょっとだけ、六花お姉さんに任せて頂戴」
「どうするの?」
「内緒なの。でもきっと治せる。ただ……」
「ただ?」
「絶対に見てはいけない」
「……わかった、信じる」
「ごめんね」
「よし、みんな行こう!」
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