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「私ね、
大好きなお姉ちゃんの結婚式を
追い出されちゃったの」
彼女は器用に
指先で紐を捌きながら
そう語り始めた。
「お姉ちゃんは私に
たくさん遊びを教えてくれたの。
だから本当はお祝いしたかったんだ」
少し寂しそうな顔をしながら
少女は続けた。
僕は気になって尋ねた。
「どうして追い出されちゃったの?」
「分からない。
私良い子にしてたんだけど、
お姉さんと結婚の相手が
しばらく話した後
『ふたりになりたいから』
って」
少女のお姉さんの考えは
僕にも分からなかった。
僕はそのまま、
ただ少女を見つめていた。
「結婚って私まだ分からないけど、
他の人が知らない
ふたりだけの時間とか、
気持ちがあるのかもね」
そう言い終えると、
先程までの寂しさを
全て拭うように少女は笑った。
その気丈で朗らかな顔に
僕の心はどうしようもなく痛んだ。
快とも不快ともとれないその痛みが、
やはり僕の心臓の動きを早めた。
僕はふと再婚の話を思い出し、
勇気を出して
彼女に聞くことにした。
「お姉さんが結婚するのは
嫌じゃないの?」
少し困ったような顔をした後、
少女は答えた。
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