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......二十九、三十。
僕は三十秒のカウントを終え、
彼女がいた方向を振り返った。
勿論あの着物の少女は
そこにはいない。
僕はふと
現実に取り残されたような気になって
強烈な寂しさを覚えた。
早く彼女を見つけないと。
焦燥が僕の足を駆り立てた。
方向も分からないまま
竹林の中を探し回った。
どこを見ても同じような景色。
時々雨に濡れて濃い灰色になった地蔵が
立っていた。
地面はぬかるみ、
何度も足を取られた。
その度に竹に捕まり起き上がった。
このまま彼女を見つけられなかったら
彼女だけでなく、
母親までが僕を置いて
どこかにいってしまうように思えた。
歩きから早足、小走りと
徐々に速度を上げていき、
足が蹴る土の量が増えていった。
服やズボンはとっくに泥だらけだった。
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