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結局扇風機の片付けが進まないまま、
僕はまた座り込み水を啜っていた。
テレビでは相変わらず
ニュースがだらだらと流れていた。
日差しは少し位置が下がり、
今ではもう足を照らさなかった。
母の再婚からもう十年が経過していた。
以前は顔がやつれ、
細かった母もすっかりふくよかな体になり、
頬は薄い赤を備えるようになっていた。
父は昔と変わらず
気の弱そうな雰囲気だが、
あの夏の出来事以来、
僕は彼の中に時々
熱を見出すことができる様になっていた。
思い返せば
彼がそういった強い感情を露わにするのは、
僕や母に関わることが多かったように感じる。
そこには僕の知らない
事情や思いがあるのだろう。
その理由を詮索する必要など
最早感じることはなく、
ある種の部外者として認識していた彼を、
僕は家族という
自身の一部の要素であるように感じていた。
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