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母が、
さりげなさを装って
僕に再婚を伝えた。
僕はその表情に
緊張と気まずさ、
そして僅かではあるが
抑え切れない愉悦を感じ取った。
父の死から一年が経過していた。
未だに父親の死を
受け入れられていない僕にとって、
母のその感情は
薄情で間抜けなものにしか
思えなかった。
おまけに
再婚相手である男性は
細身で気が弱く、
僕にとっては
常に何かに怯えている
情けない人間としか
映っていなかった。
母親曰く、
「優しくて穏やか。
父の死が忘れられない私に
寄り添って癒してくれる存在」
ということだった。
その言い分も、
随分と心が弱り、
すっかり痩せてしまっていた
母に対する再婚の必要性も
頭では理解していた。
だがその当時の僕は
幼さ故か、あるいは母、
そして亡くなった父に対する
愛着故か、再婚に対する強い反発を
覚えていた。
自分の知っている母親が
全く別の人間になってしまうような
恐怖がそこにはあった。
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