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何でお前が犯人なの、って奴が犯人
いかにも犯人くさい仕草、表情、設定があったらそいつは犯人じゃない。ご飯をいただきますするよりいにしえから決まっている事だ。
主人公とちょっと話したとか、いかにも普通ですよ、なんなら目立ったキャラじゃないですよって奴な。
今回は大人しい性格の平凡な奴が犯人なわけだが、どうやってフラグを壊すかな。
警察から疑われてる奴、サイコパスみたいな発言が多い奴、何か知ってるんだぜってにおわせの奴、ほぼ間違いなく犯人じゃないんだよな。
こいつをいかに犯人っぽくするか、俺の腕の見せ所だ。
この先のトリックはまあ知ってるけど、ソレを先回りして対策するのはルール違反。ならこれだ。一人目が殺されてどういうことだ、ってなった時。
「どういうことですかね?」
「え、さあ、僕にはさっぱり」
トリックと思われる仕掛けが動いてみんなが大混乱の時。
「なんでこんなことになってるんですかね!?」
「僕に聞かれても」
犯人の声明文がスピーカーから流れた時。
「誰でしょうね」
「さあ……」
こんな具合に何か起きるたびに聴きまくる。すると当然他の人からこう聞かれる。
「なんでその人にばっかり聞いてるの?」
きたー、最大のフリ! 待ってた、ありがとう!
「いや、この人犯人じゃないかと思って。普通な人っぽいですけど明らかに怪しい行動多かったから」
「ええ!?」
周りの人びっくり、そしても犯人びっくり。そりゃそうだ、今のところトリックに綻びはない。だったら作ればいいだけだ。
「一人目の犠牲者の時はちょっと笑ってたし、変な物音した時はやけに落ち着いてた。声明文のときなんて俺に話しかけられて内容聞こえないのに静かにして、とかなかったですよ。怪しすぎ」
「そんな、さすがに言いがかりじゃない?」
他の人がフォローに入る。
「じゃあみんなと一緒に行動してましょう、犯人じゃないなら問題ないし身の潔白になるでしよ」
「え」
「そうね、そうしましょう」
犯人の焦りを無視してそんな展開になる。事件はもう終わっている。あとは証拠隠滅作業だけでこれ以上は死人が出ないので探偵と警察が解決するだけだ。
「犯人は私立探偵の浜崎さん、アンタだ!」
謎解きを説明していた探偵が犯人を名指しすると、警察が待ったをかけてそう言った。警察のおっさんの叫びに全員、犯人も俺もぽかんとする。
「この人は俺たちと一緒に行動していた、犯行は無理だ。それに調べてもらったが、私立探偵の浜崎なんて人間存在しない、そうだろ、怪盗エックス!」
「ふ、ふふ。警察にしては優秀じゃないか」
ばさりとコートをぬぐとそこには巷を騒がせる怪盗エックス。犯人は「いや殺人は僕ですけど」と小さく言っているが無視されている。怪盗と警察の攻防でそれどころじゃない。
「待て!」
「ふははは、捕まえられるかな?」
超盛り上がってる、めっちゃ熱くなってる。犯人がいたたまれなくなってきてる、しょんぼりしてる。
あ、い、つ、ら〜!! 修正の仕方に悪意あるだろうが!
「もっと犯人大事にしろや!」
その後俺は涙目で落ち込む犯人を励まして怪盗と警察の脳天に踵落としをしてから物語を後にした。
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