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殺される奴がだいたいクズ、犯人が可哀想パターン
昔からあるけど最近のミステリーって殺されるやつの大半がクズなんだよな。裏切った、人に危害を加えた、なんなら犯罪おかしてる、あげたらキリがないけど「殺されても仕方ないよね」みたいなやつ。
これ、個人的に声を大にして言いたい。
「ふざけんな!」
洗いざらいいろいろ語り尽くした犯人の女に怒鳴った。女は戸惑っている。
「どんな理由があっても殺人を正当化する理由にはならねえよ! 相手がクズだろうが犯罪者だろうが人殺しは人殺しだ! 死んで当然復讐するのも仕方ないよねなんてあり得ねえわボケ!」
「あなたに何がわかるのよ! こいつらのせいで私は」
「お前の身の上話なんざ知ったこっちゃねえよ! こんな手間暇かけてトリック考えて予定調整して重労働して、どんだけ金と時間かけたんだ! 暇人か!これに至るまでに死ぬ気で司法で解決しようとしたかよ! 警察に相談は!? 知人友人に相談は!? 弁護士無料相談室電話したか! 労基にチクッたか! 市役所に書類申請したか! 救済措置調べたか! NPOと連絡とったか! 支援ボランティア団体に話聞いてもらったのかよ!」
俺の勢いに押されて女は黙る。だって、とかでも、と聞こえるたびに畳み掛けた。
「死ぬ気でこの世の手段全部試してダメなら闇落ちするのわかるけどな、やってねえだろ! 今回の殺人計画トータルコスト出してみろ、時給20円くらいだろ! その熱意と努力と時間と労働を何で他の事に使わなかったんだ! 完全犯罪はそう簡単にできねえんだよなめんじゃねえぞ、しかもばれてるし盛大な徒労と茶番じゃねえか馬鹿野郎! 殺すのが目的なら変にトリックとか考えてねえで殺し屋雇え!」
「正論……」
その場に居合わせた人からそんな言葉が漏れる。トドメに等しいその言葉に女はワッと泣き出した。
「だって仕方ないじゃない! 叔父さんがミステリー作家で世に出してないトリックが山のようにあったし、私の命あと半年もないの!時間がなかったの! こいつらがたまたま全員一斉にバカンスで別荘集合するっていうし大型台風くるって予報だから程よく閉じ込められるし! 今やるしかないって思ったの!」
クソが、設定盛ってきやがった。何でそんな都合よく全員の予定合って台風来るんだよ。
俺は女の頭にチョップする。ギャン! と尻尾踏まれた猫みたいな悲鳴上げて女はうずくまった。
「余命少ないなら治療に専念しろ! おい救急車呼べ! 体重100kgの男殺して山道運べるくらいには元気な女だけどな!」
俺の叫びに本当に救急車を呼ぶ周囲の奴ら。えっと、どうしようとオロオロする警察にひと言。
「手握って励ましてやれ」
「あ、そうですね」
「そんで治ったら豚箱行きだから覚悟しとけよって言ってやれ」
「それはちょっと」
結末変わらないだろ。俺は舌打ちして物語を後にした。
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