13人が本棚に入れています
本棚に追加
幽霊退治は正攻法より勢いでなんとかなる
うっかり呪いの館とか悪霊がいる建物、地域に迷い込んだ場合だいたい物語の核心となるのは日記とか書物だ。そしてそこには説明書ばりに何をどうしろと書いてある。書いてない場合でもものすごく都合よくヒントを次々に見つけて解決策を思いつくものだ。幽霊に限らず化け物、呪いとかもそうかな。でも大体、うまくいかない。
1、有効アイテムが効かない
効くレベルを超越して強くなってるとかな。き、効かない!? とかありすぎて困る。
2、結界とか浄化が壊れてる
劣化とか壊されたとか。まあこれは直せばなんとかなるパターン。ただし条件が厳しいので直らないパターンが多い。
3、根本的解決策がない
過去こんな事があったよね、で終わり。じゃあどうするって話よな
結構これらに該当する話が多い。そこで主人公たちはどうするか? 最終的には物量か未練の原因を取り除く事だ。つまり正攻法じゃない。
恨んでいるならその恨みを和らげる、どうにもならなけりゃぶっ飛ばす。なんやかんや良かったね、なんて締める。
そうはいくか。
悪霊の恨みがそんなに簡単に解決すると思うなよ。長年の恨みが同情されただけであっさり解決するなら悪霊だって苦労しねえんだよ。
呪いを解くため頑張っている主役たちだが、資料はない(俺が捨てといた)言い伝えもない(俺が消しておいた)何が原因か分からず苦労している。散々探して何もなく、絶望の中悪霊と対峙する。そしてダメ元で聞く、なにがあなたをそんなに苦しめているのかと。
悪霊はおぞましい気配を消して落ち着いた様子となった。目を丸くする主人公たちに語り始める、なぜ自分が悪霊になったのか。
語り始めて五日、主人公たちがゲッソリしている現在、悪霊は語り続ける。
「あの、まだ……?」
思わずヒロインが聞いてみるが、悪霊は真顔で告げる。
「何故私が悪霊になったか物語、全58億3692万3766巻のまだ第一巻の三分の一のところだ、大人しく聞け」
悲鳴と共に、主人公たちが逃げ出した。その後悪霊の怨念は倍くらいになった。
勝った、俺の勝利。主役が逃げたら物語が成立しないだろ、とガッツポーズをした。それにこんな解決方法誰も達成できないだろ。さあて、どう修正してするかなあと楽しみにしていたら。
その後悪霊を見放した罪の意識に苦しんだ主人公が自殺、幽霊になって悪霊の話を聞いている間に二人の間には恋が芽生えるという話になっていた。俺の目の前には幸せそうにイチャイチャする幽霊どもがいる。
「シンプルにウゼェ!!」
実体がないとか俺には関係ないので幽霊どもに回し蹴りを喰らわせ、大きく舌打ちして俺は物語を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!