「俺が先に行ってみてくるから」

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「俺が先に行ってみてくるから」

 無人島とか、肝試しに来たとか、この先に何があるかわからない場合必ずこういう奴が一人はいる。勇気ある行動だが、ホラーサスペンス系では控えていただきたい。  駆けっこでゴールテープと見せかけてチェーンソーが待ち構えてますって言ったら誰も一等賞取ろうなんて思わないだろ? そういう状況なんだよ。 「待て、俺も行く」  この間の二人の例もあるが、今回は完全に犯人がいないトラップ系とみた。それなら俺はすべて避けられる自身がある、人ならざる者の身体能力舐めんな。ああ、俺だけ避けてもしょうがないからこいつもかばわないとな。  ふと、気配を感じた。今、物語が修正された。嘘だろ、俺がしゃべってる途中なのに?  「あ、じゃあ任せた」  カッコよく俺が先に行くと言っていた男があっさりと諦めた。俺「も」行くって言ったのであって俺「が」行くなんて言ってねえだろうが。何勝手に都合よく脳内変換してんだ。  雲行きが怪しいな、と思ったが俺も言っちまった手前やっぱりなし、というのもなあと思って俺が先に進む。ちなみに今、洞窟の中を歩いているわけだが。  俺が一人で歩き始めると、ものすごい音を立てて俺の後ろが崩れ落ちた。落盤だ。いやちょっと待てこら。 「殺すなよ!」  生き残ってんの俺だけじゃねえか! どんな修正してるんだボケ! と叫ぶと、ひらりとメモ用紙が落ちてくる。 『通路崩れただけで生きてるよ、分断しただけ』  クソが。じゃあこの後の展開何も変わらねえじゃん。瓦礫の向こうから慌てふためく声が聞こえるが、誰も俺の心配してない。 「大丈夫ですかくらい言え!」  なんて自分勝手な奴らだ。そんなんだから天井が崩れるんだよ! 関係ねえけど! 俺は物語を後にした。
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