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歓迎会を兼ねた夕食の後、スマホで美夢さんの動画を一本見た。実用的ではなく装飾的なグッズが並ぶお洒落な空間――私の部屋だ――に真っ白い無印のケースや百均のトレイが並び、スッキリキレイに整理されていた。『美夢さんはいつもお洒落で参考になります! キラキラ〜』だなんてコメントもいくつか付いていた。いくらお洒落のためとはいえ真っ白で揃えてしまうと、引越しセンターの段ボールみたいに中身がぱっと分からなくて困るような気がするけれど、そんな感想を持ってしまうのは整理能力が欠けている証拠なのかもしれない。
高木さんはふい、と視線を外して、「お前、セン……あるだろ」と呟いた。
「えっ?」
(今、センスあるって言った? いやいやいやいや。そんなまさか)
首を傾げ正面の顔を見たが、高木さんは否定も肯定もせず、顔を隠すようにして左手で眼鏡を直した。
「まあ良い。いきなり本番って訳にもいかないしな」
「はぁ」
「だから笠原に一つ頼みがある」
眼鏡の奥の瞳が私をとらえる。
「俺にインスタを教えてくれ」
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