本当にあった夏のお話

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本当にあった夏のお話

 これは夏のある日、作者本人の身に起こった実際のお話です。  雨の音がさっきより一層激しく、大きくなる。  それに連なって虫の音も大きくなった気がした。  あぁ、うるさいなぁ。  虫が好きな人には怒られるかもしれないけど、私は虫が好きじゃないんだよね。  特には……。  そう思いながら私はアナログの目覚まし時計で時間を確認する。  自分の部屋の中にあった時計はもう十一時を指していた。 「そろそろ寝ないとな、明日も早いし」  そう思って私は不透明なガラスのドアとにらめっこした。  今日は夕立の影響で雨が降っていてなぜだかは知らないけど雨が長引いている。  あれ、でも夕立って短い時間に降るものを言うんじゃなかったっけ?  でも天気予報には雨のマークはついていなかったしなぁ。  窓を開けたら雨の音でうるさいんだろうなぁ、でも窓を開けないと暑いかもしれないし。  私は少し考えた末、半分だけ窓を開けた。 「……っ!」  私は悲鳴が出るのをグッとこらえた。  なぜかというと――  ミンッッッ……  セミが網戸にくっついていたからだ。  私は虫の中でもセミは一番苦手で生物のレポートでセミについて調べるように言われたときは左手が動かなくなって呼吸が荒くなったほどだ。  もちろん、そのときは別のものに変えてもらったけど……。  私は急いで窓を閉める。  きっと、何かの間違いだよね。  見間違いだよね……。  そして今度はそっと窓を開ける。  そこにはやっぱりセミがさっきとは変わらない位置にいた。 「はぁぁぁぁぁ〜〜〜」  私は大きくため息を付いてその場で脱力する。  セミがいるなんて最悪……。  セミ好きに文句言われるかもしれないけど、でも私はセミが苦手だ。  もしかしたら、叩けばどっか行くかもしれないけどそんな勇気もわかない。  もうこのまま寝るしかないか……。  明日にはいなくなっているかもしれないし。  私はそう考えて窓を閉める。  自分の部屋の電気を消して、ベットに入ってタオルケットにくるまった。 「はぁ、はぁ、はぁ」  いる、いるよぉ。  電気を消したのが間違いかもしれない。  外の通路の電気によってセミがボウッと浮き出ている。  ホラー、いやホラーが大好きな私にとっては普通のホラーよりも怖いかもしれない。  あぁ、今日寝れるかなぁ……。  雨の音はうるさいし、セミは相変わらずいるし。  私は無事に寝れることを祈って窓から視線を外して、目を閉じた。  それからどのぐらい時間が立ったのだろうか。  考え事をしながら目をつむっていたら結構な時間がたったと感じた。  寝れた感じはしなかったけど。  でもそれ以外にもなんかの違和感があって目が覚めた。  窓には……もうセミがいない。  よ、よかったぁ。  私はホッと胸をなでおろした。  でも、目をつむっていたからセミのいるいないは関係ないんじゃないかなぁ……?  私は少しの間、自分が寝れない理由を考えてみた。  窓はしまっていて、ドアもしまっている。  そうだ、暑いからだ。  私は重い体を起こして窓をあけて、すぐそこにあった扇風機をつける。  これで寝れるといいな。  あっ、今何時だろう。  ふと、そう思って目覚まし時計で時間を確認する。  深夜一時……。  日付超えてなかったと思ってたら普通に超えてた。  今日は寝不足確定かな。  私は苦笑いを浮かべると、ベットに深く沈み込んだ。  朝、起きると六時半で寝坊はしなかった。  だけど、その日以降起きる時間が遅くなりつつある私であった。  -Fin-            
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