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「あんたの親から、ついさっき電話があってね。あと一時間で、島に迎えの船が到着するんだってさ。あんたの親が、船の会社に掛け合って、そうなるようにしたんだって」
瞳は、まぶたを持ち上げ、すっと息を吸い込んだ。胸が膨らむと同時に、初めて本物の希望が芽吹いたと思った。
それ、本当ですか?
そう聞き返そうとした瞳より早く、女が口を開いた。
「ったく、どうせ今日迎えを寄越すことに変わりはないんだから、常識をわきまえてほしいわ。なんで、こんな、夜明けに来るとか言うかな~。帰り支度とか、いろいろ残ってるのに・・・え?」
女は、並べていた文句を途中でやめた。
瞳が、全身を震わせて、声に出さずに泣いていたからだ。
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