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「え、なんで? なんで泣くの?」  女は、中腰になって、瞳の肩に手を置き、軽く揺さぶった。 「ちょっと、いやだ、泣かないでよ! そうじゃなくても、ひどい顔色なのに・・・。ねえ、瞳ちゃん、や、め、て、よ~。泣、か、な、い、で~」  最後のほうは、まるで赤ん坊をあやすような、揺さぶりに合わせたリズミカルな物言いだった。 「早く泣き止んで、朝ご飯食べなくちゃ。ね? ご両親に、私たちが瞳ちゃんを泣かせてたみたいに、勘違いされてもなんだしさ。もお~、本当に、瞳ちゃんはお子ちゃまっていうか、打たれ弱いんだからっ!」  女の声は、不自然なほど明るかった。  瞳は、なんとか嗚咽を押し止めると、顔に流れた涙や鼻水を手の甲で拭いた。  それを見ると、女は、ほっとしたように瞳から手を離した。 「さ、顔を洗って、朝ご飯食べましょう。ぐずぐずしてると、船が島に着いてしまうわ」
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