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 瞳は、お礼を言うために口を動かそうとした。  だが、どうしたわけか、「ありがとうございました」や「お世話になりました」の一言が出てこなかった。  助けてもらったばかりの時は、あんなにすんなりと言えたのに・・・。  瞳が、困り、焦っていると、女は、さらい深いため息をついた。そして、 「どんなしつけされてるのか知らないけど、本当に可愛くないわねー」 と、独り言をこぼしながら立ち去った。  瞳は、惨めな気持ちと罪悪感でいっぱいになった。  自分みたいな、恩知らずで出来の悪い人間が、何かを楽しみにしたり、幸福感を覚えたりするなど、身の程知らずで許されないことのように感じられた。
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