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 無事に生理用品を与えられ、服も靴もすべて新しい物に着替えると、瞳と母親は、再び船を降りた。  海岸では、父親が、男と女と何か話をしていた。傍から見ても、とても和やかな雰囲気だった。  男の名前は、高木哲也(たかぎてつや)。女の名前は、高木悦子(たかぎえつこ)といった。瞳は、ここで初めて、二人の本名を知った。 「定年退職するまで、ご主人は法務省のお役人、奥様は日本赤十字の看護師をされていたそうだ」  母親は「まあ~」と感嘆の声をあげた。 「それは、それは、立派なご職業で・・・」 「いや、いや、そんな」  男は、照れ臭そうに笑いながら、謙遜した。
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