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高橋瞳が目を覚ますと、まず、シーリングファンが見えた。ココア色の五つの羽が、ゆっくりと回っている。
自宅にもそれがあるので、シーリングファンだとすぐに分かった。だが、色と形が異なる。たしか、自宅のそれは、色は白で羽は四つではなかったか?
動かずに、時間をかけて、今の自分の様子を観察してみた。
自分は、仰向けで寝ている。たぶん、ベッドの上だろう。頭の下に柔らかな枕の感触がある。
服は着ている。体がタオルケットで隠れているので、どんな服かは見えない。ただ、ノースリーブのワンピースであることは分かる。むき出しの腕や足に触れるシーツはさらさらとして心地よく、清潔なものであることが分かる。
瞳は、半開きの眼で思った。
ここは、どこだろう?
今、何時?
そして、何日?
自分の最後の記憶は、八月十三日で止まっている。その日は瞳の誕生日でもあった。
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