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第3話
翌日から、ガリアスはそれはそれは熱心にショーヘイを口説き始めた。医師が診断したところ、異世界人であるショーヘイの腹部にも、子宮の原型が見られるらしく、オメガ性が覚醒すれば妊娠出来る体になるそうだ。
そのためには、ショーヘイの下垂体に刺激を与え、フェロモンの分泌と活性化を促す必要があるらしい。
それはつまり、運命の番であるガリアスから、アルファのフェロモンを浴びること。そうして、二、三回は発情期を迎えれば、ショーヘイの子宮も妊娠可能な状態になるはず。との見解をもらった。
「いや、あの、マジで無理だから」
膝丈ほどのチェニックを着させられ、下着は与えられず、3度の食事はガリアスの膝の上で食べさせられる。
アルファの求愛行動を生理的に受け入れられないショーヘイは、とにかく戸惑う。
「なぜ?ショーヘイは俺のオメガなのに?」
耳元で甘く囁きながら、ガリアスはショーヘイの口に食事を運ぶ。餌付けはアルファが一番よく行う求愛行動で、それこそ街中でもよく見られる光景だ。
「こ、こういうの恥ずかしいから」
ショーヘイがやんわりとガリアスの手を掴み、遠ざけようとする。だが、ショーヘイに手を掴まれて、逆にガリアスは嬉しくてたまらない。
「ショーヘイは奥ゆかしいな。ここは俺の私室だから、誰にも見られないよ?遠慮なんてする必要はない」
今度はちぎったパンを口に運ばれて、仕方なく咀嚼をして飲み込むと、コップでミルクを飲まされる。デザートのフルーツも瑞々しくて、それをガリアスが剥いて、ショーヘイの口に入れてくれる。
「フルーツを食べるなら朝だよ、ショーヘイ」
グレープフルーツに似た柑橘系の果物を、ガリアスは器用に剥いていく。果物ナイフではなく、物凄く装飾された短剣で毎度されるので、ショーヘイは怖くて仕方がない。何しろ、包丁とハサミぐらいしか取り扱ったことがない。どちらも片刃だ。
しかし、ガリアスが扱う短剣は両刃で、手入れが行き届いているから、刃の輝きが違う。オマケに、ショーヘイを膝に乗せたまま、それで果物を剥くのだ。
(手が滑って切られたら即死だよな)
とにかく方ときも手放したくないのか、2人になれたら即膝の上。それがショーヘイの定位置になっていた。
「ああ、甘やかされるのが辛い」
ガリアスが業務でいなくなると、ショーヘイは一人を満喫する。部屋づきの侍女は、ガリアスの侍女だ。だから、ショーヘイに積極的に関わってこない。アルファであるガリアスが、ショーヘイに他のものの匂いが着くのを嫌うから。
「勇者や聖女かダメなのに、なんで嫁は許されるんだよっ」
神様たちの取り決めで、異世界から勇者や聖女を召喚できなくなった。と説明を受けたけど、ショーヘイは何故か召喚出来てしまった。それは嫁だから。
なんて、そんな理屈、到底受け入れられるわけが無い。
「なんだよ。普通、王子様の嫁取りったら貴族のご令嬢じゃないのかよ!もしくはほかの国のお姫さまだろう、ふつう」
ショーヘイはブツブツと不満を口にしながら、ガリアスの大きなベッドの上で寝転がる。アルファは、番を他人に見せたがらない。ということで、ショーヘイは絶賛軟禁中なのだ。
侍女が綺麗に整えたシーツは、清潔でシワなく綺麗に敷かれている。嫁とは言われても、ショーヘイの体はこの世界で言うところの男はベータとなんら変わりがないため、同衾はしていても、清い関係だ。
「はぁ」
枕に顔を埋めて、盛大にため息を着くと、ショーヘイは身体に違和感を感じた。
「なんか、熱っぽい」
こちらの世界に来て、ずっと緊張をしているし、なにより、この服装だ。風邪をひいたのかもしれない。
鏡に向かって、口を大きく開けて、喉が腫れていないか確認した。
「扁桃腺は普通だなぁ」
でも、鏡に映るショーヘイの顔は、頬がうっすら赤くなっていた。目も潤んできていて、発熱の兆候が現れている。
「ねぇ、俺は、風邪ひいたかも?体温計って、この世界にもあるの?」
控え室に隠れるようにいて侍女に、声をかけると、ショーヘイを見た侍女は弾かれたように立ち上がり、そして、ショーヘイをベッドに押し込んだ。
「す、直ぐにご準備致します!」
侍女は物凄い勢いで頭を下げて、それこそ勢いよく扉を閉めて出ていった。普段、物音一つ立てずに行動をしているのに、ショーヘイが風邪をひいたことがそんなに大事なのだろうか?
「ショーヘイ!」
発熱して、もう体ががぽやぽやしてきたショーヘイは、侍女に掛けられたままの上掛けの中で赤い顔をしてガリアスを見た。
「ガリアス、俺、風邪ひいたっぽい。体が熱いんだ。体温計ってないの?」
ショーヘイがそんなことを言うけれど、ガリアスにはもう、分かっていた。
「ショーヘイ、風邪ではない。ついにショーヘイの身体がオメガとして、覚醒したのだ」
嬉しそうにガリアスは言い、侍女にあれこれ指示を出す。ワゴンで運ばれてきたものを、確認すると、ガリアスは侍女を下がらせた。そうして、魔力使って扉に鍵をかける。
「だ、ダメだよ、ガリアス。俺なんか変だ。それに、布団汚した、かも」
ショーヘイは、体が熱くて汗をかいている自覚はあった。下着を着ていないから、自分の下半身から何かが漏れ出しているのを自覚してしまった。
この歳で粗相をしたなんて、恥ずかしくてショーヘイは上掛けで顔を隠した。
けれど、このときを待っていたガリアスは、ショーヘイに説明なんてする余裕が無い。もう部屋中にショーヘイの匂いが溢れているのだ。
「ショーヘイ、いい匂いだ」
そう言って、ガリアスはショーヘイが押さえていない足元の方から上掛けをめくった。
「ひゃあぁぁぁぁぁ」
無防備な足元を晒されて、ショーヘイは悲鳴を上げた。
「み、見るなぁ」
粗相をしたと思い込んでいるショーヘイは、下着をつけていない下半身を見られて大いに焦った。慌てて起き上がろうとしたら、また何かがショーヘイから零れるのを感じた。
「あ、あぁ……だ、ダメ」
慌てて股間の辺りを隠そうとしたけれど、ショーヘイから零れたモノが手についた。
「うわぁ」
自分で信じられないほどに漏れだしたなにかが、シーツをぐっしょりと濡らしていた。流石に、ここまで、盛大に粗相をするとは思ってもいなかったショーヘイは、膝丈しかないチュニックを押さえつけた。
「ショーヘイ、可愛いな」
そんな慌てふためくショーヘイを見て、ガリアスは破顔した。そして、真っ赤になったショーヘイにキスをした。
「へ、ななななな、なに?」
至近距離にガリアスの顔があって、ショーヘイは慌てた。オマケに可愛い?なにが?だって、ショーヘイはいい歳をして粗相をしてしまっているのだ。可愛いでは無いだろう。
「ショーヘイ、これはオメガの愛液だ」
ガリアスの手が、ショーヘイの手をかいくぐって股間に伸びた。そうして、ショーヘイの太腿の辺りに漏れているソレを指ですくう。
「ほら、透明だろう?」
人差し指と、親指で、透明な液体をつまむようにしてショーヘイに見せてきた。そして、指を離してその透明な液体を伸ばしてみせる。
「こんなに粘着質で、いやらしい」
ショーヘイの顔面でそんなことをして、あろうことかガリアスは、その指を舐めた。
「──────ッ!」
ガリアスの赤い舌が、ショーヘイの身体から零れた謎の液体、ガリアス曰く愛液・・・・・を舐めた。
動揺しすぎて、ショーヘイの目線はあちこちに移動する。そんなことをしている間にも、またショーヘイの身体から、溢れて零れる。
「うぅ、お腹が熱いぃ」
ショーヘイは思わず下腹を抑えた。そこが熱くて、さらに顔が熱い。粗相じゃないとしても、こんなにシーツ濡らす程だなんて、異常なのではないだろうか?
「ガ、ガリアスぅ、俺へんだよ?医者に見せた方がいいよ。ねぇ、お医者さんを呼んでよ」
発熱したように身体が熱くて、下腹にカイロでも入れたかのように熱くなり、オマケに体から得体の知れない液体が溢れ出てきている。これが正常だなんて、思えるはずがなかった。
「うん、ショーヘイ。医者には後でちゃんと見てもらおう。今は初めての発情期を、俺と楽しもうじゃないか」
そう言って、ガリアスがショーヘイの口を塞いできた。その途端、ショーヘイの口の中に甘い香りが広がって鼻から抜ける。その甘い香りがどうにも美味しいと、感じてしまう。
「んっ、もっとぉ」
息継ぎで口を離した時、そんなことを口走ったけれど、ショーヘイはもう何を言っているのか、自分でよく分かっていなかった。

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